イラン政治犯処刑の件数が、2月28日を境に急激に跳ね上がった。米国とイスラエルによる攻撃が始まって以降、国連が確認しただけで32人。アムネスティ・インターナショナルの集計では2025年を通じた政治的動機による処刑はすでに45件に達しており、前年を大幅に上回るペースで増え続けているという。

「これが最後の声かもしれない」――メフラブが残した42か月

その45件の中の一人が、メフラブ・アブドッラーザデーだった。処刑される直前、西部イランの拘置所から録音した音声をクルディスタン人権ネットワークに送っている。

「あなたたちが私の声を聞くのは、これが最後かもしれない。逮捕された最初の日から、拷問と脅しで自白を強制された。その自白はすべて嘘だった。私は無実だ。神がご存じだ」

メフラブが拘束されたのは2022年、マフサ・アミーニ抗議運動の渦中だった。ヒジャブの着用不備を理由に拘束されたアミーニが警察の拘禁中に死亡し、イラン全土で抗議の波が広がったあの時期だ。メフラブはバシジ民兵の殺害に関与したとして起訴され、42か月を拘置所で過ごした末に今月処刑された。

戦争が始まると、なぜ国内の処刑が増えるのか

調べてみると、この現象は今に始まった話じゃない。外部から軍事的圧力がかかったとき、イランの最高指導部が国内の反体制派への締め付けを強化してきた記録は繰り返しある。1988年のイラン・イラク戦争末期、数千人規模の政治犯が短期間に処刑されたとされる事例が代表的なケースだ。

戦時下の恐怖は体制側にとって、反対意見を封じ込める安上がりな道具になりやすい。アムネスティ・インターナショナルの死刑統計でも、2025年のイランの数字は「数十年で最多水準」という表現が使われており、単なる偶発的な増加とは言いにくい状況だ。マフサ・アミーニ抗議運動の関連拘束者がいまだ処刑リストに登り続けているのも、その文脈で読めるらしい。

BBCが入手した音声やクルディスタン人権ネットワークの記録は、統計の背後にある個人の話を可視化している。「32人」という数字の一人ひとりに、メフラブのような音声や手紙があったかもしれない。

この先どうなる

軍事的な対立が長期化するほど、イラン国内の処刑ペースが下がる可能性は低いとみる専門家が多い。国連人権高等弁務官事務所はすでに懸念を表明しており、今後は国際的な制裁圧力や人権団体による個別事案の記録・公表が抑止力として機能するかどうかが焦点になりそうだ。ただ、過去の事例を見る限り、外部からの批判が最高指導部の決定を即座に変えた例はほとんどない。メフラブの声が届いた先で、何かが変わるかどうか。それはまだわからない。