オーストラリア レアアース 外国投資審査の枠組みが、ついに「強制売却命令」という実弾を放った。2026年5月、豪州政府は国内のレアアース採掘企業の中国系株主6名に対し、保有株式を手放すよう命じた——Bloombergが報じた一文が、静かに業界を震わせている。
中国系6株主、レアアース権益から強制退場
命令の根拠となったのは外国投資審査制度。豪州は近年この制度を積極的に活用しており、安全保障上のリスクがあると判断した外資の投資案件を遡及的に見直せる権限を政府が持つ。今回の対象はレアアースの採掘企業であり、単なる財務投資家の排除ではなく、戦略資源の川上をどの国が握るかという問題に踏み込んだ判断だった。
レアアースとはネオジムやジスプロシウムなど17元素の総称で、EVモーター・半導体・精密誘導兵器の製造に欠かせない。現在の世界供給量の60%超を中国が担っており、その数字が「安全保障リスク」と紐づいて各国政府の意思決定を動かしている。
「オーストラリア政府は、レアアース採掘企業の6人の株主に対し、保有株式の売却を命じた」(Bloomberg、2026年5月17日)
豪政府がここまで踏み込んだ背景には、既存の投資審査では「入口規制」しかできないという限界への認識がある。すでに保有されてしまった権益を剥ぎ取るには強制売却命令しかない——そのロジックが今回初めて鉱山セクターで実行に移された形だ。
脱中国依存を「法執行」に変えた豪州の意味
中国 資源権益 排除という動きは、ここ数年で政策声明から実務レベルへと着実に降りてきている。米国ではインフレ抑制法(IRA)でレアアース関連のサプライチェーン要件を強化し、EUも重要原材料法(CRMA)で調達先の多様化を義務付けた。豪州の今回の命令は、その流れにおける「資本の国籍管理」という新段階を示している。
レアアース サプライチェーン 脱中国依存を旗印にする欧米陣営にとって、豪州は単なる産出国ではない。カナダ・米国・日本・英国と締結した鉱物資源協定網の一角であり、中国以外のレアアース精錬能力を育てる上で地政学的に重要な位置を占める。その豪州が「中国資本の保有そのものを問題にした」という事実は、他の資源国の政策立案者にとっても参照ケースになりうる。
この先どうなる
注目点は二つ。一つは売却先をどこが引き受けるか。豪州政府が友好国資本への移転を誘導するか、あるいは国内資本での内製化を優先するかで、その後の鉱山開発スケジュールが変わってくる。もう一つは中国側の反応。中国はこれまでレアアースを外交カードとして使ってきた経緯があり、報復的な輸出制限やWTO提訴の可能性も排除できない。静かな命令一本が、両国間の次の火種になるかもしれない。少なくとも、豪州がそのリスクを織り込んで踏み切ったことは確かだろう。