白リン弾がガザで燃えていた――その事実を、供給元であるアメリカ政府が自ら「可能性が高い」と認めた。2023年12月、米国務省はイスラエル軍が米国供与の白リン弾をガザ地区で使用したと評価する報告をまとめ、これが対イスラエル軍事支援の提供条件への違反に当たりうるとも明記した。ただし制裁も支援停止も、そこには含まれていなかった。
摂氏800度超、水で消せない炎が市街地に
白リンは空気に触れると自然発火し、800度以上の高温で燃え続ける。皮膚に付着すれば骨まで達する深度の熱傷を引き起こし、水をかけても酸素が遮断されない限り燃焼が止まらない。煙幕用途では合法とされる一方、民間人が密集する市街地での使用は国際人道法の重大な問題となりうる。ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体は2023年10月以降、レバノン南部やガザでのイスラエル軍による使用を繰り返し告発していた。
米国務省が今回まとめた評価は、単なる疑惑の域を出ている。「可能性が高い(likely)」という表現は外交文書では重い言葉で、政府が証拠を精査した上での判断を意味する。それでも「違反を構成する可能性がある(may constitute)」という条件付きの書き方にとどめたのは、制裁を回避するための言語的クッションだったとも読める。
「米国務省は月曜日、イスラエル軍がガザでアメリカが供給した白リン弾を使用した可能性が高いと評価したと発表した。これは米国が軍事支援を提供する条件への違反を構成する可能性がある。」(Reuters、2023年12月11日)
問題は、このロジックが使われ始めると制裁を回避しながら批判も吸収できる「免罪符」として機能しかねない点だ。国際人道法と焼夷兵器の規制をめぐる議論では、「意図」と「結果」のどちらを問うかで評価が割れる。しかし燃えた子どもの体にとって、その区別に意味はない。
議会と国際司法、この評価書の「使い道」
この評価が今後どう使われるかは、少なくとも三つの舞台で注目される。一つ目は米議会。野党・共和党の一部も含め、対イスラエル軍事支援の条件付きを求める議員は増えており、国務省の自認は審議の根拠資料になりうる。二つ目は国際刑事裁判所(ICC)。ガザをめぐる捜査が進む中、同盟国の政府文書は検察側の証拠として重みを持つ。三つ目はイスラエル軍事支援の条件違反認定が今後も積み重なった場合の「支援停止」の閾値をどこに設けるかという問題だ。
バイデン政権はこの評価を公表しながら、同時期にイスラエルへの追加弾薬供与を承認していた。「報告する」と「止める」の間にある距離感が、米国の中東政策の矛盾をそのまま映し出している。
この先どうなる
国務省の評価書は法的拘束力を持たないが、「記録に残った」という事実は消えない。ICCの捜査が進めば、米国が自ら作成したこの文書が証拠として浮上するシナリオもある。議会では2024年以降、軍事支援法の条件強化を求める動きが再燃する可能性があり、特に国際人道法・焼夷兵器に関連する条項の見直し論議は避けられないだろう。イスラエル側は使用の事実を否定し続けており、外交的な綱引きはまだ序盤戦。「可能性が高い」という評価が「認定」に格上げされるかどうか、その判断が下されるとき、米国の同盟政策は大きな分岐点を迎えることになる。