モスクワ ドローン攻撃を、ウクライナの最高指導者が自ら正当化した――ゼレンスキー大統領が「致死的なドローン攻撃は完全に正当化される」と公言したのは、単なる強がりじゃなかった。これまでロシア国内への直接攻撃には慎重な言い回しを使い続けてきた大統領が、今回は一切オブラートに包まなかった。
ゼレンスキーが「正当化」を口にした、これだけの理由
キーウへの弾道ミサイル攻撃とドローン攻撃はこの1年で数十回を超えた。ウクライナ側の論理はシンプルで、「民間地を繰り返し狙われてきた鏡の報復」という位置づけらしい。ゼレンスキー正当化発言の背景にあるのは、その積み重ねた怒りと、国際社会への問いかけ、両方が混じったシグナルと読めた。
興味深いのは、タイミングだった。欧米からの軍事支援をめぐる交渉が水面下で動いているなかで、「こちらは正式な報復手段として使う」と宣言した形になる。供与した長距離兵器がロシア本土攻撃に使われることへの制限を設けてきたNATO各国にとって、これは無視できないメッセージだった。
「モスクワへの致死的なドローン攻撃は完全に正当化される」――ヴォロディミル・ゼレンスキー(Financial Times報道)
ウクライナ エスカレーションという言葉が飛び交い始めているのは、この発言が出た直後からだった。欧州の安保専門家の間でも「ルビコンを渡った」という評価と、「前から続いていた攻撃の延長線上に過ぎない」という見方が分かれている。
NATO各国が抱える「使用範囲」という地雷
問題は兵器の使用制限をどう扱うか、だった。アメリカやイギリスが供与した長射程ミサイルについて、当初は「ウクライナ領内での防衛目的のみ」という条件がついていた経緯がある。その後、段階的に条件は緩和されてきたが、モスクワ直接攻撃を「正当」とする公式発言が出たことで、制限の再設定を求める声が同盟国内部から上がる可能性があった。
ロシア側はこれを「NATO関与の証拠」と喧伝するだろうし、西側が過剰反応すればウクライナへの支援縮小につながりかねない。ゼレンスキーとしては、むしろそのリスクを承知の上で、停戦交渉が動き始めている今の局面で強いカードを見せた、という読み方が近そうだった。
この先どうなる
ウクライナ エスカレーションがどこで止まるかは、ロシアの次の出方にかかっている。モスクワへの攻撃が続けば、プーチン政権は国内向けに強硬な報復を見せるプレッシャーを受ける。その矛先がインフラへの大規模攻撃になるか、核レトリックの強化になるかで、欧米の対応もまた変わる。NATO諸国が兵器使用範囲の再交渉に入るなら、それ自体がウクライナへの事実上の制約になりうる。停戦交渉が動いているとされるなかで、双方がぎりぎりまで強い姿勢を見せ合う局面はしばらく続きそうだった。どちらが先に折れるかより、誰が最初に「出口」を言語化できるか、そこが焦点になってくるんじゃないか。