中露博覧会の開幕式で、習近平とプーチンが祝辞を交わした。2026年5月17日のことだ。式典そのものは儀礼的に見えるが、そこで確認された経済連携の中身は、欧米が3年以上かけて築いてきた対露制裁の枠組みを、じわじわと形骸化させる内容になっている。

貿易額「過去最高」の裏で進んだこと

ウクライナ侵攻後、ロシアは西側市場から切り離された。SWIFT排除、エネルギー禁輸、金融制裁——手段は多岐にわたる。それでもロシア経済が思ったほど崩れなかった理由のひとつが、中国との取引量の急拡大だった。エネルギー・農業・製造業と、分野を問わず貿易総量は更新を続け、今や両国の年間貿易額は2022年以前の水準を大幅に上回っている。

今回の博覧会でとりわけ注目されているのが、ドル決済網を使わない人民元建て取引の拡大と、半導体を含む工業製品の対露供給ルートの制度化だ。

「中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は中露博覧会の開幕に際し祝辞を交わし、両国間の経済協力を強調した」(Bloomberg、2026年5月17日)

Bloombergはこの動きを、西側の経済封鎖を構造的に無効化する試みと位置づけている。「試み」というより、すでにかなりの部分が機能し始めているというのが正直なところじゃないか。習近平プーチン経済協力は、もはやスローガンの段階を過ぎている。

人民元建て決済が「代替インフラ」になる日

ここで引っかかるのが、速度の問題だ。対中対露制裁迂回の動きは、制裁が強化されるたびに新しい抜け道を見つけ、それが次第に制度化されていく。今回の博覧会はその「制度化」を対外的に可視化するイベントとして機能している、と見た方が自然だろう。

人民元建て決済の比率は、ロシアの輸出入取引全体でみると2022年以前とは比較にならないほど高まっているとされる。ドルを経由しない決済ルートが定着すれば、欧米の金融制裁が効くレイヤーそのものが縮小していく。これは中露だけの話ではなく、グローバルサウスの一部諸国にとっても「使えるモデル」として映りつつある。

この先どうなる

短期的には、この博覧会を契機に工業製品・エネルギー・農業資材の具体的な商談が積み上がる。人民元決済の比率はさらに高まる可能性が高い。欧米側は制裁の抜け穴を塞ぐべく圧力を強めるだろうが、中国企業への二次制裁は米中関係全体の文脈と切り離せない。そのバランスの中で、習近平プーチン経済協力は少しずつ「既成事実」を積み重ねていくことになる。速さで決まる、というのが今の状況を一番よく表している気がする。