イラン戦争が終わる気配を見せない中、原油価格は先週末からの上昇を延長した――Bloombergが2026年5月17日に伝えた内容がこれだ。注目したいのは、ホルムズ海峡を経由する世界原油輸送の「約2割」という数字。たった2割、と読むか、2割も、と読むかで、この話の重さがまるで変わってくる。
ホルムズ海峡「2割封鎖リスク」が動かすもの
ホルムズ海峡は、サウジアラビア・イラク・クウェートといった主要産油国の積み出し口だ。ここが不安定になると、エネルギートレーダーは「最悪シナリオ」を価格に織り込まざるをえない。これが地政学リスクプレミアムと呼ばれる上乗せ分で、今まさにその数値が膨らんでいる局面らしい。
面白いのは、実際に封鎖が起きたわけじゃないという点。「起きるかもしれない」という不安だけで、市場が動く。それだけホルムズ海峡の存在感は別格ということか。
「イランの戦争が終結の兆しを見せない中、原油は先週からの上昇を延長し、エネルギー市場の地政学的リスクプレミアムは高止まりしている」(Bloomberg、2026年5月17日)
高止まり、という表現が引っかかった。一時的な急騰ではなく、じわじわと「常態化」しつつある、ということを示唆しているように読める。
欧州が抱える「二重のツケ」
今回の原油続伸で特に痛手を受けそうなのが欧州だ。ロシア産エネルギーへの依存を断ち切ろうとする過程で、中東産原油への切り替えを進めてきた経緯がある。そこにイラン戦争による供給不安が重なるわけで、いわば二重のリスクを抱えている格好になった。
米国と中国も、景気の先行きに霧がかかった状態でエネルギーコストの上昇に直面している。インフレが再燃すれば、利下げ期待は後退する。株式市場や債券市場への波及も、そう遠くない話じゃないか。エネルギー市場の地政学リスクが、金融市場全体のセンチメントを左右し始めている。
この先どうなる
停戦交渉が動く兆しは今のところ見えていない。イランをめぐる武力衝突が長引けば長引くほど、原油市場のリスクプレミアムは剥がれにくくなる。産油国が増産で補おうにも、OPECの余剰生産能力には限界があり、代替供給の手札は多くない。
一方で、外交解決のシナリオが浮上した瞬間、原油は急落する可能性もある。そういった意味では今、エネルギー市場は「戦争の続き方」に張り付いている状態だ。次の変数はイラン情勢そのもの。それ以外に動かせるカードは、今のところ誰も持っていないらしい。