バラカ原子力発電所の敷地外縁部に、日曜日の朝、ドローンが直撃した。放射線への影響はなし。人的被害もなし。でも、世界の核安全保障の関係者にとっては「火災の規模」より「着弾した事実」の方がはるかに重い出来事だった。

3機のうち1機が発電機に命中――UAEが明かした迎撃の限界

UAE国防省の発表によれば、「西側国境方向」から進入した3機のうち2機は迎撃に成功した。問題は残る1機だ。バラカ原発の「内周フェンスの外側」にある電気発電機に直撃し、火災が発生。アブダビ・メディア・オフィスは「予防措置を講じており、発電所は通常通り稼働中」と公表したが、核施設の防衛網を3機のドローンで突破できた事実は消えない。

迎撃率3分の2。これをどう読むか。軍事アナリストの間では「十分だ」という声と「核施設に対して1機でも通したのは失敗だ」という見方が真っ向から割れるところだろう。

UAEが「反撃権を明言」するまでの経緯

UAEが強硬な姿勢を取るのには積み重なった文脈がある。今年2月以来、同国のエネルギー・経済インフラを標的にした攻撃が続いており、UAEは繰り返しイランの関与を指摘してきた。今回の外務省声明はその延長線上にある。

「平和的な核エネルギー施設を標的にすることは、国際法・国連憲章・人道法の原則への重大な違反である」――UAE外務省声明

さらに「あらゆる敵対行為に対応する権利を有する」とも明記した。これは外交的な常套句ではなく、明確な反撃権の留保として読める。国連の核監視機関IAEAのグロッシ事務局長も「深刻な懸念」を表明し、状況を注視していると報じられた。中東の核施設安全保障を巡る議論が、一段と現実的な問題として浮上しつつある。

攻撃の発射源についてはまだ公式発表がない。UAE当局は「捜査中」としており、情報が小出しになっている点も気になるところだ。

この先どうなる

鍵を握るのは「発射源の特定」と「UAEの次の一手」の二つだろう。イランの直接関与が証明されれば、UAE・イラン間の緊張は今年最大の局面を迎える可能性がある。反対に、関与が曖昧なまま推移すれば、UAEは反撃権を明言しながらも行動を保留し続けるという難しい立場に置かれる。IAEAが核施設への攻撃を「前例のない越境行為」として国際社会に警鐘を鳴らす動きを強める可能性もある。中東の核施設安全保障を巡るルール作りの議論が、今回の着弾を契機に加速するかどうか――次の72時間の動きが分岐点になりそうだ。