ウイグル強制労働防止法が施行されて約3年。それでも新疆産品は迂回ルートを通じて米国に流れ込み続けているらしい――バイデン政権が政権末期のこのタイミングで対中圧力を再び強めた背景には、そんな「法の穴」への焦りが透けて見える。
2022年の法律が機能していない? 新疆サプライチェーンの抜け穴
ウイグル強制労働防止法は、新疆ウイグル自治区から来るすべての製品について「強制労働で作られた」と推定し、企業側がそれを否定する証拠を自ら用意しなければ輸入できないという仕組みだ。立証責任を企業に転嫁したこの設計は当時かなりラジカルに映った。
ところが調べてみると、ベトナムやカンボジア経由での再輸出、原材料レベルでの混入など、迂回手段は思った以上に多様で、税関の追跡が追いつかない実態があるらしい。米税関・国境保護局(CBP)の差し止め件数は増加傾向にあるものの、流入量全体と比べれば「氷山の一角」という指摘もある。
「バイデン政権は、新疆における強制労働への対応強化を中国に要求し、政権末期の数週間において北京への圧力を強めた。」(Financial Times)
この要求が実質的な政策変更につながるかどうかは疑問だが、少なくとも記録としての意味はある。次のトランプ政権が対中政策をどう引き継ぐかに向けた「地ならし」とも読める動きだ。
グローバル企業が今すぐ直面している「証明できないリスク」
サプライチェーン問題でじわじわ効いているのは、法律そのものより「証明できないリスク」の重さだ。新疆産の綿花、ポリシリコン、トマトは世界の多くの製品に紛れ込んでいる。自動車の配線材、太陽光パネル、アパレルの素材として何段階も川下に流れていくと、最終製品メーカーが原産地を完全に把握するのはほぼ不可能に近い。
日本企業も例外じゃなくて、米国向け輸出を持つ製造業や小売業者は、取引先に遡及調査を求めるデュー・ディリジェンスのコストが静かに膨らんでいる。「うちは関係ない」と思っている企業ほど、実はサプライチェーンのどこかに新疆との接点を持っている可能性がある。
この先どうなる
トランプ次期政権は関税を主要な対中ツールと位置付けており、人権アプローチを前面に出したバイデン式の圧力とは手法が異なる。ただ、ウイグル強制労働防止法自体は超党派で成立した法律であり、廃止される可能性は低い。むしろ、執行の重心が「外交的要求」から「関税・輸入禁止の実力行使」に移る展開が現実的なシナリオといえそうだ。新疆サプライチェーンをめぐる企業リスクは、政権が代わっても消えるどころか、かたちを変えて続いていく。