ハマス軍事部門指導者の殺害が確認されたのは、ガザへの空爆が続く中でのことだった。イスラエル政府がこの人物を「2023年10月7日の大規模奇襲攻撃を設計した中枢」と位置づけてきたことを考えると、これは単なる一作戦の結果ではなく、2年近く続く軍事目標リストの最重要項目に×印がついた瞬間とも言える。死者1,200人、人質240人超を生んだあの日の司令塔を、イスラエルはようやく排除した形だ。
10月7日を設計した男は何者だったか
イスラエル軍が標的とした人物は、ハマス軍事部門の最高位に位置し、奇襲の作戦立案から実行指揮まで一手に担ったとされていた。イスラエル情報機関はその足取りを長期にわたって追い続けており、今回の空爆はその追跡の集大成らしい。
ハマスは表向き「殉教」と位置づけて支持者を鼓舞するパターンを繰り返してきた。ただ、今回は組織の軍事指揮系統そのものを担う人物の喪失で、内部への打撃は過去の幹部排除とは規模が違う、という見方も出ている。
「イスラエルは同人物を10月7日攻撃の立案者と位置づけている」―AP通信
問題は「排除した後」だ。過去の事例を振り返ると、指導者の不在が組織を弱体化させるケースもあれば、むしろ後継者が殉教の旗を掲げて内部を結束させ、より強硬な路線に転換するケースもある。どちらに転ぶかは、ここ数日の動きが見えてこないとわからない。
人質200人超、停戦交渉はどう変わる
今なお100人を超える人質がガザに留め置かれている。これがもっとも切実な問いで、軍事的な「成果」が交渉テーブルに何をもたらすかは、楽観と悲観が真っ二つに割れているのが現状だ。
一方では、軍事指導部に空白が生じたことで、ハマス内の「交渉派」が発言力を取り戻し、停戦協議が加速するという見立てがある。カタールやエジプトが仲介してきた交渉のテーブルに、新たな変数が加わったのは確かだろう。
もう一方では、後継争いが生じた組織は往々にして「自らの正当性を示すため」に強硬姿勢を打ち出す。人質解放よりも軍事的な抵抗継続を選ぶ新指導部が出てくれば、交渉はむしろ遠のく。イスラエル軍の作戦とガザの民間人犠牲者数が積み上がり続ける中、この成果が和平への入口になるか、暴力の連鎖の新章を開くかは、まだ誰にも断言できない状況だ。
この先どうなる
今後の焦点は三つに絞られそうだ。まずハマス内部で誰が軍事部門を引き継ぐか。次に、カタール・エジプト仲介の停戦交渉が今回の事態を受けて再起動するかどうか。そして国際社会——特にバイデン後の米国とアラブ諸国の連携——がイスラエルに対して交渉圧力をかけ続けられるかどうか。10月7日攻撃設計者の排除はイスラエルにとって象徴的な節目だったが、ガザの戦争が「次のフェーズ」に入るとすれば、そのシナリオは今週末までに輪郭が見えてくるはずだ。
