ガンドラックが、ここまで断定的な言い方をするのは珍しい。DoubleLineキャピタルのCEO、ジェフリー・ガンドラック氏がBloombergの取材に答え、FRBによる利下げは「まったく不可能(just not possible)」だと言い切った。「債券王」と呼ばれる人物が、可能性を残すどころか全否定で語ったのだから、市場関係者の間でこれが静かに波紋を広げているのも当然かもしれない。

PPIが年率6%近く——ガンドラックが突きつけた数字

今回の発言の核心は、インフレ圧力の根強さにある。米国の卸売物価指数(PPI)は直近で年率6%近くに達しており、消費者物価も高止まりが続いている。

FRBとしては、利下げに動けば「インフレとの闘いを諦めた」と受け取られるリスクがある。一方で、据え置きを続ければ景気への下押し圧力は蓄積していく。いわゆる「身動きが取れない状態」——ガンドラック氏の見立てでは、現時点でその状態が続くしかないということらしい。

「It's just not possible for the Fed to cut rates.」(FRBが利下げするのはまったく不可能だ)— Jeffrey Gundlach, Bloomberg インタビューより

FRB利下げ停止が長引けば、当然ながら影響は米国内にとどまらない。住宅ローン金利の高止まりは米国の不動産市場を圧迫し続けるし、企業の借り換えコストも上昇したまま。さらに新興国はドル建て債務の返済負担が重くのしかかる。

住宅・企業・新興国——連鎖する「金利凍結」の余波

インフレ再燃が足かせになっている現状は、単純な「景気後退か利下げか」という議論を超えた問題でもある。ガンドラック氏が「構造的な問題」と表現したのは、利下げができないのではなく、利下げすれば今度はインフレが再加速するという「逃げ場のなさ」を指しているのではないか。

市場では今年前半まで年2〜3回の利下げを織り込んでいた参加者も多かったが、今回の発言はそのシナリオを大きく引き戻すものだった。債券市場では長期金利が上昇し、ドルが底堅く推移する展開が続いている。

この先どうなる

当面の焦点は、FRBが次回のFOMCでどんな言葉を選ぶかにある。パウエル議長が「データ次第」という定型句を繰り返すほど、市場はガンドラック氏のような外部の声を手がかりにしようとするだろう。PPIや消費者物価が落ち着く兆しを見せなければ、FRB利下げ停止の観測はさらに強まる可能性がある。年内利下げゼロというシナリオが、いつの間にかコンセンサスになっている——そんな状況が近いかもしれない。