アブ・ビラル・アル・ミヌキが殺害された。土曜深夜0時直後、ナイジェリア・ボルノ州メテレの要塞化された拠点に踏み込んだ米奈共同部隊は、側近数名ごと標的を排除し、自軍の死傷者ゼロ、装備損失ゼロで作戦を終えた。ISのナンバー2が消えるのに要したのは、数か月の準備と一夜の急襲だった。
トランプが「世界最活動テロリスト」と断言した男の正体
アル・ミヌキは2023年に米国務省から特別指定グローバルテロリストに認定されている。トランプ大統領は「ISISの世界的ナンバー2」であり「世界で最も活動的なテロリスト」とまで踏み込んで表現していた人物だ。
「アブ・ビラル・アル・ミヌキは、ISISの世界的ナンバー2であり、世界で最も活動的なテロリストだ」——ドナルド・トランプ米大統領
ナイジェリア軍によれば、アル・ミヌキは「国家総局長」に相当するポストに昇格していたとされる。チャド湖盆地——ナイジェリア・チャド・ニジェール・カメルーンにまたがる広大な湿地帯——は長年、ボコ・ハラムとその分派であるISWAP(イスラム国西アフリカ州)の牙城であり続けてきた場所でもある。
ISの「重心」はいつの間にかアフリカに移っていた
ここで押さえておきたいのが、ISの地理的な変容ぶりだ。全攻撃の約90%がいまやサハラ以南アフリカで発生しており、シリア・イラクを根拠地としていた時代のイメージとは大きくかけ離れている。その中でも、ナイジェリア拠点のISWAP(イスラム国西アフリカ州)が最大の脅威と目されている。
ナイジェリアのティヌブ大統領は今回の作戦を「ISに重大な打撃を与えた大胆な共同作戦」と評した。米奈両軍の連携がここまで深まっているという事実自体、あまり注目されてこなかった点じゃないだろうか。今回の「死傷者ゼロ」という結果は、その連携の練度を端的に示している。
この先どうなる
トップが消えた組織は、短期的には混乱する——これは過去のテロ組織の事例が示してきたパターンだ。ただしISWAPはすでに分散型の指揮体制を持つとみられており、後継者の台頭や報復攻撃への警戒は当面続くだろう。チャド湖盆地を舞台にした米奈の対テロ協力がさらに深化していくのか、それとも今回が一過性の成果に終わるのか。西アフリカの治安情勢は、しばらく目が離せない局面に入った。