日銀マイナス金利解除まで、あと一手——。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたその一報は、17年間にわたって積み上げてきた超緩和の砦が、ついに崩れ始める予兆だった。政策金利はマイナス0.1%から引き上げられる見通しで、実現すれば2007年以来初の利上げ。「異次元緩和」という言葉が当たり前になった世代にとっては、文字通り未体験の領域に踏み込むことになる。

物価2%超えが続く日本で、何が変わったのか

日銀がここまで動けなかった理由は単純で、「物価が上がっても賃金が追いつかない」という悪循環への恐怖だった。ところが今回、その構図に変化が出てきたらしい。春闘での賃上げ率が30年ぶりの水準に達し、物価上昇と賃金上昇が同時進行するという、日銀が長年待ち望んでいた「好循環の芽」が出てきた——そう判断したってことだろう。

「日本銀行当局者はマイナス金利政策の終了に向けて動いており、これは17年ぶりの利上げとなる歴史的な転換であり、世界第3位の経済大国にとって新時代の幕開けを示すものだ。」(ウォール・ストリート・ジャーナル)

ただ、「好循環の芽」と「好循環の定着」は別物だ。内需の弱さや中小企業の賃上げ余力を考えると、日銀が慎重姿勢を崩していないのも当然で、今回の動きが「解除への地ならし」に過ぎない可能性もある。

国債残高GDP比260%——金利上昇が財政に刺さる角度

日本利上げ2024が現実になったとき、最初に揺れるのが国債市場だろう。日本の国債残高は対GDP比で260%近い水準にある。金利が1%上がれば、利払い費の増加は数兆円規模になるという試算もある。「財政の持続性」という問題が一気に可視化されるわけで、これは投資家にとってかなり不快な眺めのはずだ。

円相場への影響は二面的だ。金利上昇は円高要因として働く一方、財政悪化懸念が強まれば円売り圧力になりうる。住宅ローン金利への波及も避けられず、変動型ローンを抱える家計は早ければ数カ月以内に返済額の増加を体感することになる。グローバルな資本フローでは、円キャリートレードの巻き戻しが新興国市場を揺さぶるシナリオも警戒されている。円相場金利影響のチェーン反応が、どこまで連鎖するか——そこが一番の読みどころかもしれない。

この先どうなる

日銀の次の一手は3月か4月の政策決定会合が焦点とみられている。解除幅がマイナス0.1%からゼロへの一歩にとどまるのか、それとも追加利上げへの道筋を同時に示すのか、そこで市場の受け止め方はかなり変わってくる。植田総裁がどんな言葉を選ぶかが、円と国債の値動きを決める。17年ぶりの転換点、静かに、でも確実に近づいてきた。