モデナ車突入、その瞬間を目撃した人間はこう語っている――「突然加速した。人が飛んでいくのが見えた」。2025年、白昼の世界遺産エリアで起きたこの事件は、欧州が長年向き合ってきた車両テロの悪夢を、また一度呼び覚ました。

時速100キロで歩道へ、ナイフまで持ち出した31歳

現地時間16時30分、北イタリアの古都モデナの旧市街を走るヴィア・エミリア通りが突然の惨事に包まれた。UNESCO世界遺産にも登録されたモデナ大聖堂のすぐ隣、普段なら観光客と地元住民が行き交うこの通りに、31歳のモロッコ系イタリア人男性が車を歩道へ向けて突進させた。

車は少なくとも時速100キロ以上で縁石を乗り越え、男女8人を次々とはねた。女性5人・男性3人が負傷し、うち4人は重傷。その中の女性1人は両脚を失ったと複数の現地メディアが伝えている。

「車が近づいてくるのが見えた。縁石に向かっていた。突然加速した――少なくとも時速100キロは出ていた。人が飛んでいくのが見えた。」(現場目撃者・イタリアメディア経由)

車がショーウィンドウに激突して停止した後も、男は逃走をやめなかった。追いかけた市民のルカ・シニョレッリさんにナイフを振るい、頭部と胸部に傷を負わせてから取り押さえられた。市長マッシモ・メッゼッティは「意図的に歩道へ突進した」と断言しており、偶発的な事故という見方はほぼ消えている。

首相が「極めて深刻」と声明、欧州車両テロの文脈で見ると

ジョルジャ・メローニ首相は「極めて深刻な事案」と緊急声明を発表した。犯行の動機や組織との関係はまだ捜査段階だが、欧州車両テロの歴史を振り返ると、2016年のニース、2017年のバルセロナ、ストックホルム、ロンドン橋と、繰り返されてきた手法とほぼ重なる。

イタリア当局が注目しているのは、容疑者が「モロッコ系イタリア国籍」である点だけでなく、犯行後にナイフを持ち出して被害を拡大しようとした点らしい。車両突入後にナイフで追い打ちをかけるパターンは、2017年以降の欧州での事件でも見られた戦術で、捜査当局が単独犯かどうかを精査している。

この先どうなる

イタリア当局は動機の解明と共犯者の有無を最優先で捜査している段階で、テロ認定されるかどうかはまだ流動的な状況だ。ただ、メローニ政権はもともと移民・治安問題を政権の看板に掲げてきた経緯がある。この事件が政治的にどう使われるかは、今後の捜査の行方と同じくらい注目に値するんじゃないかと感じる。被害者の中に両脚を失った女性がいる現実を前に、欧州の「公共空間の安全」をめぐる議論は、また新たな局面を迎えそうだ。