ボーイング中国受注200機、総額400億ドル超——その数字だけを見れば景気のいい話に聞こえる。ところが中身を掘り下げると、純粋な商取引とは言いがたい要素が山ほど出てきた。
400億ドル合意の裏に、交渉カードがあった
AP通信の報道によれば、トランプ政権とボーイングは中国が航空機200機の購入に合意したと発表した。ボーイングにとって中国は全需要の約20%を占める最重要市場で、貿易摩擦が長引いた期間は受注が事実上凍結状態だった。財務への影響は小さくなく、今回の合意は経営的に待ちに待った「解凍」にあたる。
「トランプ氏とボーイングは、中国が航空機200機の購入に合意し、米航空機メーカーにとっての主要市場が再開されたと述べた」——The Associated Press
だが、米中貿易合意の文脈で見ると話は変わってくる。トランプ政権が関税交渉のテーブルに航空機輸出を乗せてきたのはこれが初めてではない。巨額の製造業輸出品、雇用への波及、選挙区への説明——ボーイングの受注はそれらをまとめて満たせる「見栄えのいい成果」として機能する。中国側も計算した上で飲んだ、という見方が自然だろう。
中国が同時に進める「エアバスへの乗り換え」計画
航空機輸出地政学の観点で引っかかるのは、中国がボーイングへの依存を意図的に薄めようとしている動きだ。エアバスA320系列の発注を増やし、中国国産のC919の商業運航も始まっている。今回200機を買うと同時に、将来の調達先を分散させる選択肢を着々と広げている。
つまり今回の合意は、中国にとって「ボーイングに戻った」というより「関税緩和の対価として一時的にボーイングを使った」という色合いが強い。買ってあげる側の余裕、とでも言うべき立場から交渉に臨んでいる可能性がある。米中貿易合意を「米国の勝利」と単純に読むのは難しい。
一方、ボーイングにとってリスクがないわけでもない。737 MAXの墜落事故以降、中国での信頼回復には時間がかかっており、受注が確定しても実際の引き渡しスケジュールや機体認証の問題が残る。「合意」と「実際に飛ぶ」の間には、まだ何段階かのハードルがある。
この先どうなる
短期的にはボーイングの株価と受注残に好材料で、サプライチェーン全体にも恩恵が及ぶだろう。ただし米中の関税交渉が再び揺れれば、この200機合意が人質になりかねない構図も変わらない。中国側はC919の生産能力拡大を急いでおり、数年単位で見ると国産機への置き換えが加速する可能性もある。今回の受注が「市場再開の始まり」になるか、「貿易休戦期間限定の取引」で終わるかは、次の関税交渉の行方次第といったところか。