ホルムズ海峡封鎖リスクを、中国が自ら口にした。米国通商代表部(USTR)のジェイミーソン・グリア代表がブルームバーグのインタビューでこう明かした——「中国は、ホルムズ海峡が障害なく開放された状態であることを望んでいる」。外交の文脈でこれが語られたのは、米中貿易協議の席だったとされる。それだけで、この発言の重さはわかるんじゃないか。
世界の原油の5本に1本が通るルート、中国への影響は
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ幅わずか数十キロの水道だ。世界の原油輸送量のおよそ20%がここを通過する。サウジアラビア、イラク、UAE、クウェート——中東産油国からのタンカーが連日行き交うこのルートが止まれば、最も痛いのはどこか。
答えは中国だった。中国は現在、原油輸入量の約40〜50%を中東に依存している。日本やインドも影響を受けるが、絶対量でいえば中国の打撃が最大規模になりうる。「エネルギー安全保障」という言葉は各国が使うが、中国にとってのホルムズはほぼイコール「経済の動脈」と言い換えていい。
「中国は、ホルムズ海峡が障害なく開放された状態であることを望んでいる」——USTR ジェイミーソン・グリア代表(ブルームバーグ取材より)
ここで引っかかったのが、このタイミングだ。グリア代表がこの発言をしたのは、米中貿易協議が続くさなか。貿易摩擦の交渉テーブルで、なぜホルムズが話題になるのか。中国側がイラン問題を「交渉材料」として持ち込んだ可能性があるとみる向きもある。
イランと深い関係を持ちながら、海峡の開放を求める二枚腰
中国とイランの関係は、単純ではない。2021年には25年間にわたる包括的協力協定に署名し、エネルギー・インフラ・軍事と幅広い分野で連携を深めてきた。制裁下のイラン産原油を事実上の「割引価格」で購入し続けてきたのも中国だ。
一方で、イランが実際にホルムズ海峡を封鎖した場合、直撃するのは中国経済でもある。「イランの友人」でありながら、海峡の自由航行を強く望む——この二重構造こそ、今回のグリア発言が映し出したものだったらしい。
中国 エネルギー安全保障の観点から言えば、イランとの関係維持と、ホルムズ開放要求は矛盾していない。むしろ中国はイランに対して「封鎖はするな」という圧力をかける立場も持っているわけで、そこに独自の交渉力が生まれる。米国がそれを「使えるカード」と認識したとすれば、貿易協議での発言引き出しに動いた可能性もある。
この先どうなる
イランと米国の核協議が再び動き始めた今、ホルムズ海峡の緊張は「常時リスク」から「急性リスク」に変わりつつある局面でもある。中国がグリア発言を通じて「海峡開放を望む」と国際的に表明した形になった以上、今後イランが強硬手段に出た際、中国がどう振る舞うかに注目が集まる。
USTR グリア 発言は、米中がホルムズ問題で一致した部分を持つという異例のシグナルでもある。貿易戦争の最中に生まれた、奇妙な利害の一致——この先の米中協議で「エネルギー安全保障」がどこまで議題に乗るか、引き続き追いたいところだ。