台湾防衛をめぐる戦略的曖昧性が、また一段と薄くなった。北京での米中首脳会談を終えたトランプ大統領は帰国便の機内で、習近平から「台湾を守るのか」と直接問われた場面をみずから語り、「そういう話はしない」と答えたと明かした。そのうえで「いかなるコミットメントも行っていない」とまで踏み込んでいる。

習近平が直接聞いた——トランプの答えは「言わない」

歴代の米政権が守り続けてきた外交上の綱渡りがある。台湾との関係を維持しながら、中国とも関係を深める。台湾を守るかどうかを明示せず、わざと曖昧にしておくことで両岸の緊張をギリギリで抑え込んできた。これが「戦略的曖昧性」と呼ばれる立場だった。

ところが今回、習近平がその問いをそのままぶつけた、という事実がかなり重い。しかもトランプは「どちらにも約束していない」と述べており、事実上、台湾側へのシグナルでもある。北京に向けては安心材料に、台湾に向けては不安材料に、同時になりうる発言らしい。

「私は台湾についていかなるコミットメントも行っていない」——ドナルド・トランプ(帰国機内、記者団への発言)

米国は法律上、台湾が自衛手段を持てるよう支援する義務を負っている。だが「有事に軍を出すか」という問いへの答えは、ずっと留保されてきた。その留保が今回、より濃い形で表に出た感じがする。

110億ドルの武器売却——頼清徳と「先に話す」

さらに気になるのが武器売却の話だ。昨年11月、トランプ政権は台湾向けに総額110億ドル(約1兆6千億円)規模の兵器パッケージを発表していた。高性能ロケット砲や各種ミサイルが含まれる大型案件で、中国はこれを激しく非難していた。

ところがトランプは今回、「かなり短期間のうちに判断を下す」と述べつつ、「台湾の頼清徳総統と先に話す」と付け加えた。これは決定の先送りを示唆しているとみて間違いなさそうで、北京に配慮した一時保留という見方が広がっている。米中首脳会談の成果として、中国側に見せるカードになった可能性もある。

台湾向け武器売却 110億ドルという具体的な数字が今後どう動くかは、米中台の三角関係を測る一つの指標になってくるだろう。

この先どうなる

台湾防衛の戦略的曖昧性はこれまでも「あえて答えない」ことで機能してきた外交装置だったが、今回トランプが「コミットしていない」と能動的に語ったことで、その意味合いが変わりつつある。黙っていることと、言葉にして否定することは、受け手の解釈がまるで違う。

注目は二点。一つは頼清徳との電話会談がいつ実現し、武器売却がどう判断されるか。もう一つは、中国がこの発言を外交的勝果として利用するかどうか。米中首脳会談 北京 2025という節目を経て、台湾海峡の緊張管理は次のフェーズに入ったかもしれない。とりあえず今週の動きから目が離せない。