Nvidia中国輸出規制は、トランプ・習近平会談を経てもびくともしなかった。首脳同士が顔を合わせれば何か動くかと期待した向きも多かったはずだが、蓋を開ければ現状維持。それどころか、会談の間にもファーウェイが着々と市場を塗り替えていた。
ファーウェイが1年で埋めた「Nvidiaの空席」
米国の輸出規制によって、NvidiaのAIチップ「H100」「A100」は中国市場から事実上締め出された状態が続いている。問題はその空白が「誰かが埋めるまでの時間稼ぎ」にすらなっていない点だ。
ファーウェイは自社開発のAIアクセラレーター「Ascend」シリーズを前面に押し出し、中国の大手クラウド企業や国営企業向けへの供給を急拡大させている。中国政府も調達先を国産チップに切り替えるよう水面下で誘導しており、西側技術への依存脱却はもはやスローガンではなく、実運用フェーズに入ったと見ていい。
「この膠着状態は、中国企業が西側技術への依存を減らすべく、ファーウェイのような国内半導体メーカーへと急速に移行するなかで生じている。」(The New York Times)
Nvidiaが中国で年間どれほど稼いでいたかといえば、ピーク時には全売上の20〜25%を中国市場が支えていたとされる。絶対額に換算すると数十億ドル規模。それが丸ごと吹き飛ぶシナリオが、もはや絵空事ではなくなってきた。
米中「半導体覇権」の深さは、首脳会談1回で解けるレベルじゃなかった
今回の会談で貿易摩擦の一部は緩和に向かったとも報じられた。ただ、半導体だけは別枠の話だったようだ。AIチップの輸出管理は安全保障案件として扱われているため、通商交渉のテーブルに載せること自体、米国内の政治的ハードルが高い。
米中半導体覇権という文脈で見ると、この規制は「中国がAI軍事利用に転用できる技術を遮断する」という論理で設計されている。貿易黒字や関税とは違い、「国家安全保障」の旗を降ろすのは与党・野党を問わず難しく、会談1回でひっくり返るほど単純な問題じゃなかったってことだ。
Nvidiaとしては、中国向けに規制対象外の下位チップ「H20」を販売する抜け道を模索してきた経緯があるが、そのH20ですら追加規制の対象になりかけており、逃げ場は着実に狭まっている。ファーウェイAIチップの性能が西側製品に追いつく日が来れば、たとえ規制が解除されても「もう要らない」と言われるリスクすら出てくる。
この先どうなる
短期的には、Nvidiaが中国市場を取り戻す現実的な道筋は見えにくい状況が続きそうだ。米国内では輸出規制をさらに強化しようとする動きも残っており、緩和どころか締め付けが強まる可能性も排除できない。
一方のファーウェイは、Ascendシリーズの量産体制と歩留まりの改善が最大の課題として残っている。国産チップへの移行が加速しているとはいえ、最先端モデルの性能差はまだ縮まりきっていないとされ、中国のAI開発者コミュニティからも「使い勝手の差」への不満が漏れてくる。
結局のところ、この競争は「誰が先に折れるか」ではなく「誰が先に技術差を埋めるか」に移行しつつある。Nvidiaが中国で稼げない時間が長引くほど、その差は縮まっていく。次の首脳会談でも、半導体の話は「保留」のまま終わるかもしれない。