ジェンスン・ファン訪中の有無が、米中ハイテク外交の火種に変わろうとしている。トランプ前大統領が自身のTruth Socialに投稿し、NvidiaのCEO・ジェンスン・ファン氏が習近平主席の訪中に同行したにもかかわらず、CNBCがその事実を誤って否定したと断言した。「偉大なジェンスン・ファン」と称えながら、主要メディアを名指しで断罪するいつものスタイル。ただ今回、話の中身は軽くなかった。

CNBCが「招待されなかった」と報じた、その根拠は

CNBCの報道内容はシンプルだった。「ファン氏は招待されなかった」というものだ。半導体業界を追う記者としては、自然な推測ではあった。Nvidiaは現在、米国の対中半導体輸出規制で最も制約を受けている企業のひとつ。H100、H20といった先端GPUの対中輸出は段階的に締め上げられており、ファン氏自身も「輸出規制はNvidiaにとって痛手だ」と公言してきた経緯がある。

だからこそ、習近平との訪中外交にファン氏が同席するという絵柄は、記者の目には「まさか」と映ったんだろう。ところがトランプはそれを正面から否定した。

「CNBCは、Nvidiaの偉大なジェンスン・ファンが、あの素晴らしい(訪中に)招待されなかったと誤って報じた」

現時点でCNBCや第三者による独立した検証は確認されていない。つまりトランプの投稿だけが、この情報の唯一のソースということになる。

Nvidia・対中輸出規制をめぐる構図が変わるかもしれない

仮にファン氏の訪中同行が事実だったとすると、話の射程は大きい。Nvidiaは今、AIチップの供給をめぐって中国市場との距離をどう保つかという難問を抱えている。規制が強まるほど、中国のファーウェイや国内メーカーが代替品を開発する動機も高まる。ファン氏が米政権の意向を背負って訪中の場に立ったとすれば、Nvidia・対中輸出規制の行方に何らかの交渉余地が生まれた可能性を示唆する。

もっとも、トランプが「誰々は同行した」と投稿すること自体、政治的なシグナリングである場合もある。ファン氏本人やNvidiaからの公式コメントは現時点でない。「同行した」という事実が確認されるのか、それともトランプのメディア攻撃の一環に終わるのか、現段階では判断しかねるところだ。

この先どうなる

注目点は三つ。①Nvidiaが同行の有無を公式に認めるか、②CNBCが訂正または反論を出すか、③仮に同行が事実なら米議会の対中強硬派がどう反応するか。特に③は見逃せない。対中輸出規制を強化してきた超党派の議員たちが、Nvidiaとトランプ政権の接近に黙っていない可能性がある。AI覇権争いのど真ん中で、ジェンスン・ファン訪中の真相は予想外に大きな波紋を広げるかもしれない。