米イラン交渉が暗礁に乗り上げたとの報道が流れた瞬間、3日間積み上げてきた原油価格の上昇分が吹き飛んだ。5月12日(現地時間)、原油市場は一転して反落。楽観論が霧散するのに、数分もかからなかったらしい。
ホルムズ海峡という「20%の急所」が揺れている
今回の価格変動を読み解くには、ホルムズ海峡という地点を頭に置いておく必要がある。世界の原油海上輸送量の約20%が、この幅わずか約50キロの海峡を毎日通過している。サウジアラビア、イラク、クウェート、UAEからアジア向けに向かうタンカー群が、ここを素通りしている構図だ。
米イラン交渉が進めば、イランによるホルムズ海峡封鎖という最悪シナリオは遠のく。それが市場の読みだった。だから交渉進展の観測が出るたびに原油価格は下がり、決裂懸念が出るたびに跳ね上がる。今回は後者が来た、ということになる。
「イランとの和平交渉が暗礁に乗り上げ、原油は3日間の上昇から反落した。」(Bloomberg、2026年5月12日)
日本にとってこれは対岸の話ではない。日本の原油輸入の中東依存度は約90%超。中東産原油のほとんどがホルムズ海峡を通る以上、この航路が少しでも不安定化すれば、輸入コストと調達リスクの両方が跳ね上がる。韓国や中国も構図は同じで、アジア全体が「ホルムズ感応度」の高い地域といってもいい。
トランプの「インフレは短期的」発言、市場はもう信じていない?
もう一つ気になった点がある。トランプ大統領が北京訪問前に「インフレは短期的なものだ」と述べていたこと。交渉が長期化すれば原油コストの高止まりが続き、その「短期」という言葉が市場から問い直される展開になりかねない。
米イラン交渉は単なる外交の話ではなく、エネルギー価格を通じてインフレ見通しにも直結している。原油価格反落が「一時的な調整」で終わるか、それとも交渉長期化を織り込んだ本格的な再上昇の前兆かは、まだはっきりしない。
この先どうなる
焦点は、米イラン交渉の次のラウンドがいつ、どんな形で再開されるかだろう。交渉が停滞したまま時間が経過すれば、ホルムズ海峡封鎖リスクへの警戒は市場に再び織り込まれていく。原油価格は地政学ニュースに敏感に反応するサイクルに入っており、交渉の進捗次第で数日以内に再び大きく動く可能性がある。トランプ大統領の北京訪問の成果と合わせて、今後数週間は目が離せない局面が続きそうだ。