バイデン大統領令が、早ければ現地時間6月4日(火)にも発動される見通しだとロイターが報じた。対象は米墨国境での移民の庇護申請——議会を一切通さず、大統領権限だけで制限をかけようとしている。選挙まで5ヶ月を切ったこのタイミングで、こんな手を打ってくるとは正直、少し驚いた。

バイデン、なぜ今「トランプ的手法」を選んだのか

今回の措置の仕組みはシンプルで、米墨国境を越えた移民が一定の条件下で庇護申請できなくなる——要するに、トランプ政権が試みた「asylum ban(庇護申請禁止)」に近い内容とみられている。

ロイターの報道によれば、これは議会立法ではなく大統領令という形をとる。2024年2月には共和党の抵抗で超党派の国境管理法案が潰れており、バイデン陣営としては「議会がやらないなら自分でやる」という構図を演出したい思惑もあるだろう。

「事情に詳しい複数の関係者によれば、バイデン大統領は早ければ火曜日にも米墨国境に関する大統領令を発動する計画であり、移民の庇護申請を制限する措置となる見通しだ」(ロイター、2024年6月3日)

民主党内からは早速「トランプ政策の焼き直し」という批判が出ている一方、共和党からは「遅すぎた」という声。どちらからも撃たれているあたり、なかなか厳しいポジションだ。

国際法との衝突と、即時提訴のシナリオ

引っかかるのが、国際法上の問題だ。1951年の難民条約とその議定書は、迫害を受けるおそれのある人々が庇護を求める権利を保障している。米国はその締約国であり、庇護申請を一括で制限する措置は「ノン・ルフールマン原則」——迫害の危険がある国へ送還してはならないというルール——に抵触しうる。

ACLUやヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体が即時提訴に動くことはほぼ確実視されており、連邦裁判所で差し止め命令が出る可能性も十分ある。実際、トランプ政権時代の類似措置は繰り返し司法に阻まれてきた経緯がある。

米墨国境の移民制限という政策そのものより、「大統領権限でどこまでできるか」という憲法上の線引きが、今後の最大の争点になりそうだ。

この先どうなる

最も注目されるのは、発令直後の司法の動き。人権団体が連邦地裁に仮処分を申請すれば、施行は数日で止まる可能性がある。それでもバイデン陣営にとっては「自分は動いた」という既成事実が残る——世論向けのシグナリングとして機能する設計かもしれない。

11月の大統領選に向け、国境問題はバイデンの最大の弱点として世論調査でも繰り返し浮上してきた。今回の大統領令がその数字を動かせるかどうか、効果測定は早ければ数週間以内に出てくる。司法が止めれば「議会も裁判所も邪魔をした」という新たな言い訳も生まれる。どちらに転んでも、陣営に無駄なカードではないという計算は透けて見える。