コバルト精錬所の建設に動く米企業が、世界のコバルト生産の約7割を握るコンゴ民主共和国との供給契約をついに結んだ——Bloombergが2026年5月13日に報じた。米国初の大規模施設を目指すこの動きは、EV電池サプライチェーンにおける中国依存という長年の課題に、ワシントンが本気で向き合い始めたサインに映る。

精製の7割を中国が握る、コバルトの歪な地図

EV電池の正極材に欠かせないコバルト。採掘の主役はコンゴ民主共和国で、世界供給の6割超がここから出てくる。ところが採掘後の精製工程になると話が変わって、処理能力の約7割は中国が担っている。つまり原料をコンゴが掘り、中国が加工し、世界に流すという構図がずっと続いてきた。

米国がEVシフトを加速させる中、この構図は安全保障上の弱点として繰り返し指摘されてきた経緯がある。トランプ政権が推進するクリティカルミネラルの国内調達強化策は、まさにここへの対処という側面が強い。今回の供給契約は、その文脈で読むと意味が重くなってくる。

「米国初の大規模コバルト精錬所の建設を目指す企業が、コンゴと供給契約を締結した」(Bloomberg、2026年5月13日)

精錬所が実際に稼働すれば、コンゴで掘ったコバルトを米国内で処理する独自ルートが初めて確立される。中国を経由しないサプライチェーンの「実験」として、業界の注目度は高い。

コンゴ産コバルトに付きまとう、もう一つの問い

ただ、手放しで歓迎できない事情もある。コンゴ民主共和国の採掘現場では、長年にわたって児童労働や環境汚染が国際社会から批判されてきた。アップルやテスラをはじめとする多くのテック・EV企業が「倫理的調達」を宣言しながらも、サプライチェーンの透明化は十分とは言えない状況が続いている。

米企業がコンゴ産コバルトを大量調達するとなれば、この問いはより鋭くなってくるはずだ。供給契約の締結は出発点にすぎず、採掘から精錬まで追跡できる仕組みをどう作るかが、企業の信頼性を左右しそうだ。「安く速く確保する」と「きちんと調達する」の両立は、口で言うほど簡単じゃない。

コンゴのクリティカルミネラルをめぐっては、米中それぞれのアプローチが今後さらに競合する見通しで、外交カードとしての価値も上がっている。コンゴ政府側にとっても、買い手の選択肢が増えること自体は交渉力の向上につながるという読みがあるだろう。

この先どうなる

精錬所の完成・稼働までには数年単位の時間がかかる。その間に中国が精製能力をさらに拡張すれば、米国のアドバンテージは縮む。スピード感が問われる局面だ。

一方、コンゴ産コバルトの倫理的調達を認証する国際的な枠組み作りも動き始めており、今回の米企業がどの基準に準拠するかは今後明らかになってくるはず。コバルト精錬所の話は、EVの普及という明るい話と、資源採掘の暗い現実が交差する場所にある。完成したときに「クリーンなEV」と言えるかどうかは、サプライチェーンの中身次第だ。