ニューヨーク・タイムズの購読者数減少を、トランプ自身が武器として使い始めた。2025年、トランプ前大統領はTruth Socialへの投稿で同紙を「世界中で最悪の新聞の一つ」と断じ、購読者離れを公然と指摘。単なる罵倒に見えるが、これが繰り返されるたびに少しずつ何かが削られていく感覚がある。
トランプの投稿、原文で読むとこういうことらしい
Truth Socialへの投稿でトランプはこう書いている。
「失敗し続けるニューヨーク・タイムズ。世界中で最悪の新聞の一つであり、購読者を急速に失い続けている」
NYタイムズは2024年時点で約1040万のデジタル購読者を持ち、米紙の中では圧倒的な規模を誇る。「急速に失い続けている」という主張の根拠は曖昧で、実際には直近で購読者数が大幅に崩落した公式データは確認されていない。ただ、デジタルシフト後の成長鈍化や、政治報道への偏向批判が保守・リベラル双方から積み重なっているのは事実で、トランプはその空気を精確に拾っている。
「攻撃のコスト」がメディア側に蓄積していく問題
ここで引っかかるのは、攻撃の内容より攻撃の頻度と形式だった。大統領経験者が公式に近いSNSで特定のメディアを繰り返し名指しすると何が起きるか。読者の一部はその印象を事実として内面化し、広告主はリスク回避を考え始め、記者たちは自己検閲の誘惑にさらされる。報道の自由という概念が力で折れるわけじゃない。じわじわと消耗していくほうが厄介じゃないか、というのが専門家の間でも繰り返し出てくる見方だ。
トランプ・メディア攻撃の歴史は長い。第1次政権時代から「フェイクニュース」のレッテル貼りは国際的に輸出され、各国の権威主義的指導者が同じ語彙で自国メディアを封じる際の手法として定着した。米国発の言説が民主主義への不信を世界に波及させたという側面は、軽視できないところだった。
この先どうなる
NYタイムズ側は現時点で正面からの反論を避けている。沈黙が賢明なのか、それとも疲弊なのかは外からは見えにくい。トランプが第2次政権を本格化させる中で、主要メディアへの攻撃はむしろ激しくなるとみるのが自然な流れだろう。ニューヨーク・タイムズ購読者数の推移は今後、このメディア攻撃の「効果測定」として世界が注視する指標になっていく可能性がある。報道の自由 米国という文脈で言えば、数字が答えを出す日は案外早く来るかもしれない。