英国債ギルト急落が、約30年ぶりの水準にまで達した。30年物国債利回りが1998年以来初めての高値を更新したと、Bloombergが報じた。1998年といえば、ロシアがデフォルトを起こし、ヘッジファンドLTCMが世界の金融システムを揺るがした年だ。あの年の水準を超えてきた——という事実が、マーケットに走る緊張感の深さを物語っている。

スターマー退陣圧力が直撃した「財政信頼」という名の信用

引き金は地方選挙の惨敗だった。労働党が議席を大幅に失い、キア・スターマー首相への辞任要求が党内外から噴出。その政治的な混乱が、直接ギルト債の売りを加速させたかたちになった。

政治リスクと国債市場が連動するのは珍しくないが、今回の速度は際立っていた。財政健全性への懸念がくすぶる中で、トップの求心力低下が重なると、市場はこれほど敏感に反応する——それが改めて示された局面だった。

「英国債市場が急落し、長期債利回りが約30年ぶりの高水準に達した。キア・スターマー首相への辞任圧力が高まる中、英国財政の脆弱な状況への懸念が再燃した」(Bloomberg報道より)

スターマー退陣圧力がこれほど市場を動かすのは、財政余裕のなさが背景にある。英国はすでに公的債務の対GDP比が高止まりしており、利回り上昇はそのまま借り入れコストの増加に直結する。悪循環の入り口、と見る向きもある。

1998年の高値超えが意味する数字——ポンドとEU交渉への波紋

利回り上昇はポンド相場とも無縁ではない。資本フローが変われば通貨も動く。英国はEUとの通商交渉を控えており、財政的な弱みを抱えたまま交渉テーブルに着くことになれば、相手側の優位は明らかだろう。

英国財政危機という言葉が独り歩きするのを警戒する声もある。一方で、30年債の利回りが節目を超えてきた事実は、単なる数字ではなく「市場が黄色信号ではなく赤信号を点灯させた」というシグナルとして受け取られている——というのが、現地アナリストの見方らしい。

2022年のトラス政権崩壊時に英国債が急落した記憶は、投資家にまだ残っている。あのときとの違いは何か、同じ構図が繰り返されているのか、そこが今、問われているところだ。

この先どうなる

焦点は二つある。ひとつは、スターマー政権が安定を取り戻せるかどうか。辞任・続投どちらに転んでも、財政運営の方針が明確に示されるまで、ギルト債の不安定な動きは続く可能性が高い。

もうひとつは、英中央銀行(イングランド銀行)がどう動くか。利回り上昇が続けば、介入観測が市場の話題に上ってくるかもしれない。EU通商交渉のタイムラインとも絡み、今後数週間は英国発のニュースから目が離せない状況が続きそうだ。