対中イラン石油制裁が、よりによって米中首脳会談の直前に発動された。ロイターが報じたこの動き、単なる対イラン圧力じゃなくて、北京に向けた無言のメッセージが二重底になっていた。

日量100万バレル——イランを生かし続ける「中国マネー」の規模

イランが現在、中国へ輸出している原油は日量100万バレルを超えているとされる。この数字がどれだけ重いかというと、イランの外貨収入の中でも最大クラスの柱で、核開発やミサイル調達の資金源とワシントンが名指しするほどの規模だ。

トランプ政権がここを狙うのは自然な流れだった。経済制裁を強化しても迂回路が存在する限り効かない。その迂回路の出口が、中国の「影の艦隊」と呼ばれるタンカー網だったわけで、今回の制裁はまさにその血管を絞りにいった格好になる。

「トランプ政権は、ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席との会談を前に、イランの対中石油輸出を標的に設定し、テヘランの主要な歳入源を断つことを狙っていると報じられた。」(Reuters)

核交渉が水面下で動いているタイミングに重なっているのも偶然じゃないだろう。交渉テーブルにつかせる前に財布を絞る、という順番を意識したとしか思えないタイミングだった。

北京が「買う」か「止める」か——どちらに転んでもトランプの得になる構図

今回の制裁で面白いのは、中国にとっての選択肢がどちらも痛い点だ。イラン原油を買い続ければ、制裁の対象として米国市場へのアクセスを失うリスクがある。逆に購入を止めれば、イランの財政が急激に悪化してテヘランへの影響力を失う可能性もある。

トランプ・習近平会談では台湾問題や関税をめぐる交渉が主題になるとみられているが、このイラン制裁カードが交渉テーブルの外で静かに圧力をかけ続ける。「核交渉でイランを押さえてほしければ、原油購入を減らせ」という暗黙の取引条件を突きつけているとも読める。

エネルギー市場への影響も注目株だ。中国向け供給が実際に絞られれば、代替調達先を探す動きがサウジやUAEへの需要増につながる可能性がある一方、イランが輸出先を多様化しようと動けば別の火種が生まれる。トランプ習近平会談の結果次第で、原油価格のベクトルが変わりかねない局面でもある。

この先どうなる

焦点はまず米中首脳会談の着地点。北京がイラン原油購入の縮小を示唆するような発言を出せば、制裁の「圧力演出」として一定の成果になる。一方でイランの核交渉が膠着すれば、トランプ政権が追加制裁や軍事オプションをちらつかせながら再び場を揺さぶる展開も十分ありえる。イラン石油収入の急減が現実になれば、テヘランの交渉姿勢が硬化するか軟化するか——歴史的にはどちらに振れるかが読みにくいのが正直なところで、もうしばらく目が離せない。