トランプ イラン停戦が「生命維持装置の上にある」――トランプ大統領が自らそう認めた瞬間、1カ月続いてきた休戦の脆さがあらためて浮き彫りになった。月曜日のホワイトハウスで記者団に語った言葉は短かったが、その前日に起きていたことを知れば、なぜあの表現になったのかが見えてくる。
イランの14項目提案、何が書かれていたのか
イランが日曜日に送ってきた反案は、14項目から成る。タスニム通信が伝えた内容によれば、全戦線での即時停戦、米海軍によるイラン港湾封鎖の即時解除、今後の攻撃を行わないという保証、そして戦争被害への補償要求が含まれている。さらに踏み込んでいるのがホルムズ海峡の主権確認だ。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの海峡に対するイランの「権利」を認めよ、という要求は、米国が到底飲める内容ではなかった。
加えてイランは、レバノンでイスラエルがヒズボラへの攻撃を続けていることも停戦の障害として明記したらしい。つまりこの14項目は、米国だけでなくイスラエルの行動まで縛ろうとする内容になっていた。
「停戦は維持されているが、信じられないほど脆弱だ」――トランプ大統領、ホワイトハウスにて
トランプはTruth Socialに「totally unacceptable」「a piece of garbage」と投稿し、即座に拒絶した。外交交渉の場でここまで直接的な言葉が使われるのは珍しく、交渉継続への意欲より拒絶のメッセージを内外に示す狙いがあったとみられる。
ガリバフの反撃と、ホルムズ海峡封鎖リスク
イランも黙っていなかった。議会議長のガリバフはXに「いかなる侵略にも応じ、教訓を与える準備がある」と投稿。続けて「14項目の提案に示されたイラン国民の権利を認める以外に選択肢はない。引き延ばせば引き延ばすほど、米国の納税者が払う代償は増える」とも書いた。外交メッセージというより宣戦布告に近いトーンだった。
ホルムズ海峡封鎖が現実になれば、原油市場への影響は即時・広範囲になる。湾岸各国の積み出し港はほぼすべてこの海峡に依存しており、封鎖が1週間続けば欧州・アジア向け供給に深刻な遅延が生じる。市場がこの交渉の一言一言に敏感に反応するのはそのためだ。
一方、イラン外務省報道官のバガエイは14項目を「責任ある、寛大な提案」と評し、トランプの「ゴミ」発言を真っ向から否定している。双方がそれぞれの国内向けに「譲らない姿勢」を演じている側面は否定できないが、それが続くほど偶発的な衝突のリスクも高まっていくってことでもある。
この先どうなる
現時点で停戦は名目上は継続中だ。ただトランプ自身が「信じられないほど脆弱」と認めた以上、この枠組みに残された時間は長くないかもしれない。次の焦点は、米国が独自の対案を提示するかどうか。ガリバフは「引き延ばすほど米国の損失が増える」と言ったが、ホルムズ海峡の主権要求を含む14項目がそのまま通る可能性はほぼゼロとみられている。イラン側がどこまで要求を絞り込んで再提示できるか、あるいはトランプが「勝利」と呼べる形の妥協点を探れるか――外交の窓が完全に閉じる前に、水面下の動きがあるかどうかが当面の見どころになりそうだ。
