ホルムズ海峡の燃料輸送が戦闘によって事実上締め上げられ、中国最重要の製造拠点で電力網が限界に近づいている——Bloombergがそう報じたのは、単なる地政学ニュースではなかった。調べていくと、これは「遠い戦争」と「自分の買い物」をつなぐ、かなりリアルな話だとわかってくる。
世界輸出の3割を支える地域で、いま何が起きているか
中国の沿岸製造地帯は、スマートフォン基板から電気自動車のバッテリーモジュールまで、文字通り世界の工場として機能してきた。この地域が消費するエネルギーの相当部分は、ペルシャ湾岸からホルムズ海峡を抜けてくる原油・LNGに依存している。
ところが今、その海峡ルートが戦闘の余波で機能不全に陥りつつある。タンカーの運航リスクが跳ね上がり、保険料が急騰、実質的に通過できる船舶数が絞られている状態らしい。中国国内の発電用燃料の在庫が消化されていくのに、補充がままならない——そういう構図だ。
「中国で最も重要な製造拠点での経済活動が電力供給に圧力をかけており、イラン戦争が燃料輸送を締め上げる中、エネルギーへの深刻なストレステストが引き起こされている」(Bloomberg)
電力制限が本格化すれば、工場の稼働シフトが削られ、生産量が落ちる。中国製造業の電力不足は過去にも起きているが、今回は外部要因が引き金という点が違う。国内政策で調整できる話ではないわけで、そこが厄介なところだ。
北京の「代替ルート」は間に合うか——備蓄数字が示す現実
北京はパイプライン経由の中央アジアルートや、ロシア産エネルギーの調達拡大で穴埋めしようとしているとされる。ただ、これらのルートの輸送容量は海上輸送の代替になるほど大きくない。イラン戦争が長引けば長引くほど、ギャップは広がっていく計算になる。
サプライチェーンへの波及も現実味を帯びてきた。製造拠点の電力不足が深刻化すれば、納期遅延が積み重なり、半導体・自動車部品・家電の調達コストが上昇する。イラン戦争がサプライチェーンを揺さぶる経路は、原油価格の高騰だけじゃない——電力という内側からの圧力が、もうひとつのルートとして浮かび上がってきた。
この先どうなる
最大の分岐点は、ホルムズ海峡の通航がいつ、どの程度回復するかだ。短期的な停戦や停戦合意があれば、タンカーの流れは戻り、中国の電力網への圧力もいずれ緩和されるだろう。逆に紛争が夏以降も長期化するなら、中国製造業の電力不足は季節的なピーク需要と重なり、さらに厳しい局面を迎えかねない。北京がロシア・中央アジアからの代替調達をどこまでスケールアップできるかが、当面の焦点になる。グローバルな在庫水準と物流コストの動向は、しばらく目を離せそうにない。