アフリカ投資の規模として過去最大級――フランスのマクロン大統領が2025年5月12日、ケニアの首都ナイロビで開催されたアフリカ・フォワード・サミットにおいて、総額230億ユーロ(約3兆6000億円)の投資契約群を一挙に発表した。エネルギー・インフラ・デジタルの3分野を軸に据えたこのパッケージ、数字のインパクトは申し分ない。ただ、ここで立ち止まりたいポイントがある。「契約」と「実行」は別物だ、という話だ。
230億ユーロの内訳――中国マネーへの対抗軸として設計された構図
今回の発表は、中国の一帯一路がアフリカ大陸で積み上げてきた港湾・道路・通信インフラへの影響力を明確に意識したものだった。欧州側の読みはこうだろう。2050年には人口が25億を超えると試算されるアフリカは、世界最大の成長市場になる。そのパイプを誰が握るかが、今世紀後半の地政学を左右する。
マクロン外交の文脈で言えば、今回のサミットはウクライナ支援疲れと国内政治の膠着で求心力が落ちているフランスにとって、外交的な得点を挙げる貴重な場でもあったらしい。「欧州はアフリカを見捨てていない」というメッセージを、数字で可視化した格好だ。
Macron Announces €23 Billion Investment Deals at Africa Summit — Bloomberg, May 12, 2025
ただ、過去の事例を調べると少し慎重になる。欧州のアフリカ向け投資プラットフォームは2022年の「グローバル・ゲートウェイ」構想以降、総額3000億ユーロ超の約束を積み上げてきたが、実際に案件として動いているプロジェクトの割合は公約に遠く届いていない。今回の230億ユーロが拘束力ある確定契約なのか、意向表明の束なのか――その区別が報道では判然としない部分があって、そこが引っかかった。
ケニアが選ばれた理由と、アフリカ側の計算
開催地がナイロビだったことも意味深だ。ケニアは東アフリカのデジタルハブとして急成長しており、中国系企業のインフラ投資も既に根を張っている。欧州にとってケニアを取り込むことは、東アフリカ全体への足がかりになる。ケニア政府側も、中国一辺倒ではなく欧州との競争環境を作ることで交渉力を高めたい思惑があったはずで、双方の利害が一致した場だったと言える。
アフリカ側の視点は一枚岩じゃない。インフラ整備を急ぐ国は資金の出どころよりスピードを優先するケースが多く、「中国か欧州か」という二項対立でシンプルに語れない現実がある。マクロン外交がどこまでアフリカ各国の本音を捉えているかは、今後の案件進捗が教えてくれるだろう。
この先どうなる
焦点は「契約の実行率」に移る。向こう12〜18か月で個別案件の調印・着工がどれだけ確認できるかが、今回の発表が本物かどうかの踏み絵になる。中国一帯一路対抗という文脈でマクロン外交が成果を刻めれば、EU全体の対アフリカ戦略にも追い風が吹く。逆に「また約束倒れ」という評価が定着すれば、アフリカ各国の欧州離れを加速させかねない。アフリカ投資をめぐる欧中の綱引きは、2025年後半に向けてさらに可視化されていきそうだ。