ボーイング737MAX約500機、総額500億ドル規模——その数字が本当なら、ボーイングにとってこれは単なる受注ではなく、崖っぷちからの生還を意味する。Bloombergが5月12日に報じたところによると、中国はボーイングの主力機737MAXを約500機調達する契約を検討しており、CEOのケリー・オルトバーグがトランプ大統領の訪中代表団に加わる見通しだという。

ケリー・オルトバーグが「意義深い機会」と言った理由

オルトバーグCEOはこの訪問について、すでに踏み込んだ言葉を残していた。

「トランプ大統領の訪問は、わが社にとって意義深い機会となる」

この一言に、どれだけの切迫感が込められているか。ボーイングは2018年と2019年の737MAX墜落事故で346人の命が失われ、約20ヶ月間の運航停止に追い込まれた。そこに新型コロナによる航空需要の蒸発が重なり、財務の傷はいまだ深い。米中貿易摩擦の激化で中国向け納入が事実上止まっていた期間も長く、中国の各航空会社はエアバスへの乗り換えを進めてきた経緯がある。500機というオーダーは、その流れをまとめて引き戻す規模感だった。

トランプが「貿易の勝利」に仕立てるシナリオ

今回の交渉には、ボーイング側の思惑だけでなくホワイトハウスの政治的計算が色濃く滲んでいる。トランプ政権は対中関税を交渉カードとして使いながら、この受注を「アメリカが勝ち取った成果」として国内向けに演出したい意図が透けて見える。製造業の雇用や輸出拡大を訴え続けるトランプにとって、500億ドル規模のジェット機商談は格好のニュースになる。ただ、米中間で技術・製造分野の相互依存が再び深まれば、安全保障の観点から議会や国防関係者が難色を示す展開も当然ありうる。ケリー・オルトバーグとトランプ、双方の「勝ちたい理由」が一致しているようでいて、落とし穴は思わぬところにあるかもしれない。

この先どうなる

交渉が正式契約に至るかどうかは、米中貿易協議全体の行方に連動する部分が大きい。仮に合意が成立すれば、ボーイングの株価と業績見通しに対するマーケットの評価は一気に塗り替わるだろう。一方でエアバスは中国国内の組立工場を持ち、すでに強固な地盤を築いている。737MAXが中国の空を再び大量に飛ぶ日が来るとしても、そこに至る道は商業交渉だけでなく外交と安保の綱引きが続く。ボーイングの「復活の賭け」が吉と出るか凶と出るか、答えはトランプ訪中の結果が出る数日以内に見えてくるはずだ。