ジェイミー・ダイモンが「日々深刻さを増している」と言い切った瞬間、会場の空気が変わったらしい。2026年5月12日、パリで開かれたJPモルガン・チェース年次グローバルマーケッツカンファレンス。ブルームバーグのフランシーン・ラクアとのインタビューの中で、同行の会長兼CEOは、イラン戦争の経済的影響についてここまで踏み込んだ言葉を使った。総資産4兆ドルを超える世界最大級の金融機関のトップが、公開の場でこれを「断言」した——それだけで十分に重い。

ダイモンが今、パリで警告を発した理由

JPモルガンのグローバルマーケッツカンファレンスは、世界の機関投資家や政策立案者が集まる場として知られている。そこでダイモンが選んだ言葉が「getting more serious each day(日々深刻さを増している)」だった。現在進行形の比較級、しかも「毎日」という時間軸の強調。これは単なる地政学リスクへの懸念表明じゃない——現実の市場へのシグナルとして読むべき発言だ。

同インタビューでダイモンは、裕福な米国人消費者が「適切な水準で消費している」とも述べており、米国内需の底堅さを認めつつも、対外リスクについては明確に警戒感を示した。国内は堅調、でも外は不透明——この非対称な景色が、いま市場参加者を悩ませている構図でもある。

「イラン戦争の影響が日々深刻さを増している」——ジェイミー・ダイモン、JPモルガン・チェース会長兼CEO(Bloomberg、2026年5月12日)

ホルムズ海峡・原油・インフレ——連鎖するリスクの輪郭

イラン情勢が経済に直撃するルートはほぼ決まっている。まずホルムズ海峡。世界の原油輸送量の約2割が通過するこの海峡が不安定化すれば、原油価格への上昇圧力は避けられない。そこにインフレ長期化、各国中央銀行の金融引き締め継続が絡む。FRBの利下げシナリオが後退するほど、住宅ローンや企業借入コストへの影響も広がっていく。

ダイモン自身、過去にも「スタグフレーション」リスクを繰り返し指摘してきた人物だ。今回の発言は、そのシナリオがより現実的なものとして視野に入ってきた、という認識の表れとも取れる。JPモルガンのイラン戦争 経済影響への見立ては、ウォール街全体のリスク評価に少なからず影響を与える。

この先どうなる

市場が注目するのは、この警告が「言葉だけ」で終わるかどうかだ。JPモルガンがポートフォリオ戦略を実際に変えてくれば、それは他の大手金融機関の判断にも連鎖しうる。原油先物の動向、中東における停戦交渉の有無、そしてFRBの次の一手——この三つが当面のチェックポイントになりそうだ。ダイモンの発言が「予言」になるか「杞憂」で終わるか、答えは市場が出す。少なくとも、世界で最も多くの情報にアクセスできる金融機関トップが「深刻化している」と言った事実は、軽く流せるものじゃないだろう。