ピムコCIOイバシンが、今この瞬間も市場が信じている「利下げシナリオ」を真っ向から否定した。フィナンシャル・タイムズの報道によれば、世界最大級の債券運用会社ピムコの最高投資責任者ダン・イバシンは、イラン戦争の長期化がFRBを再び利上げに追い込む現実的なリスクがあると明言したらしい。2026年5月10日のブルームバーグが伝えた内容だ。

ホルムズ海峡が動けば、原油インフレが再点火する

問題の核心はホルムズ海峡にある。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの海峡で緊張が続けば、エネルギーコストは高止まりしたまま。FRBがインフレ再燃を確認した瞬間、利下げどころか追加利上げの議論が始まる、というのがイバシンの読みだ。

調べると、似たような構図は1970年代のオイルショック時にも起きていた。あのとき連邦準備制度は後手を踏み、最終的に政策金利を20%近くまで引き上げることになった。さすがに同じ水準には届かないにしても、「戦争が金融政策を縛る」という図式はあのころと重なって見える。

「ピムコの最高投資責任者ダン・イバシンは、イラン戦争を背景にFRBが利上げに踏み切るリスクがあると見ている」――Bloomberg / Financial Times(2026年5月10日)

FRB利上げリスクが現実になれば、まず住宅ローン金利が上がる。次に企業の資金調達コストが膨らんで設備投資が鈍る。そして一番ひどいのが新興国で、ドル高・金利高の組み合わせは債務返済の負担を一気に押し上げる。三連鎖、というより三重苦と呼んだほうが正確かもしれない。

市場の「利下げ前提」というポジションが一番危ない

ここで引っかかったのが、現時点の市場参加者の立ち位置だ。多くのトレーダーはまだ「FRBは年内に利下げする」という前提でポジションを組んでいる。イバシン警告はそのポジションへの直撃弾になりうる。債券価格は利上げ期待が強まれば下落するし、株式市場の割引率も跳ね上がる。イラン戦争の原油インフレが引き金を引いたとき、損失が一方向に集中する展開は十分ありえる。

ピムコほどの運用規模になると、「警告」自体が市場を動かすことがある。今回の発言がFT経由でブルームバーグに流れたことで、すでにトレーダーの意識は少し変わったんじゃないかという気もする。

この先どうなる

当面の注目点は二つ。ひとつはホルムズ海峡の通航状況——ここが実際に遮断されれば原油価格の急騰は避けられず、FRBへの圧力は一気に高まる。もうひとつはFRB高官の発言トーンで、次のFOMC前後に「インフレ警戒」を強調する声が増えるかどうかが判断材料になりそうだ。イバシン発言を「杞憂」と片付けるのはまだ早い。むしろ今、最前線の運用者が何を恐れているかを知っておくことに、それなりの意味があると思っている。