頼清徳が台湾総統に就任した瞬間、北京はすでに次の一手を用意していた。就任式から数日も待たず、中国人民解放軍は台湾周辺で大規模な軍事演習を展開。その名は「联合利剑-2024A」。偶然の産物じゃなく、明らかな政治的メッセージだった。
「蔡英文より危険」と北京が判断した根拠
前総統・蔡英文の時代も、中国は繰り返し軍事的圧力をかけてきた。2022年のペロシ下院議長訪台の際には、台湾を包囲するような形で弾道ミサイルを発射している。それでも蔡英文は「現状維持」を表向きの基軸に置いていた。
頼清徳は違う。台南市長時代から「台湾は独立した主権国家」と繰り返し発言してきた人物で、北京はこれを看過できなかったらしい。就任演説でも「中華民国台湾」という表現を使い、主権を強調する姿勢を崩さなかった。外交的な建前より、自分の立場を優先したってことだ。
「北京が『危険な分裂主義者』と呼ぶ頼清徳が台湾の新総統に就任する。中国が同島への軍事的圧力を強める中での船出となる。」(The Wall Street Journal)
中台関係2024は、単なる「いつもの緊張」ではなく、構図が変わった緊張だと見るべきかもしれない。
チップが止まれば、世界が止まる
台湾海峡緊張が注目されるのは、軍事的リスクだけじゃない。台湾は世界の半導体生産の約60〜70%を担い、TSMC単独で最先端チップのシェアを握っている。ここで何かが起きれば、スマートフォン、自動車、医療機器まで、影響が波及する範囲は計り知れない。
米国はこの現実を誰より理解しているから、バイデン政権は台湾への武器売却を続けながらも、北京との対話チャンネルを閉じなかった。矛盾しているようで、それが現実の外交だったりする。頼清徳政権の誕生で、その綱渡りがさらに難しくなった。
この先どうなる
頼清徳が今後どこまで独立志向の言動を表に出すか、ここが分岐点になりそうだ。演説レベルで留まるのか、それとも法的地位の変更に踏み込むような動きを見せるのか。北京が「レッドライン」と設定しているのは後者で、前者なら圧力をかけつつも軍事行動には踏み切らないと見るアナリストが多い。
米国の大統領選も重なる2024年、台湾海峡緊張をめぐる情勢は秋にかけて再び動く可能性がある。頼清徳の一期4年が、平静に終わるか、歴史の転換点になるか。そのシナリオを左右するのは、台北でも北京でもなく、ワシントンの判断かもしれない。