Buy American Policyが、今度は「言い訳無用」という言葉を添えて突きつけられた。トランプ大統領がTruth Socialに投稿した一文は短い。だが、その射程は年間7000億ドル、日本円で100兆円を超える連邦調達市場を丸ごと塗り替えかねない話だった。
7000億ドル市場に「国産縛り」——何が変わるのか
米連邦政府の調達規模は世界最大級。国防総省の戦闘機部品から、郵便公社の車両、航空管制システムに至るまで、その発注先には日本・欧州・韓国のメーカーが深く入り込んでいる。連邦調達の国産化が本格始動すれば、真っ先に影響を受けるのは防衛関連部品の対米輸出に依存するサプライヤーだろう。
日本の場合、F-35の共同生産や艦艇用電子部品など、米軍需要に連動したビジネスモデルが複数の中堅メーカーに根付いている。「同盟国だから例外」という保証は、今のところどこにも書いていない。
「連邦政府の全機関はアメリカ製を買え――言い訳は一切無用だ。何十年もの間、ワシントンの政治家たちはあなたの税金を海外に送り続けてきた。」
— Donald J. Trump, Truth Social
この投稿が法的拘束力を持つ大統領令なのか、それとも政治的シグナルに留まるのか、現時点では判然としない。ただ、第1次トランプ政権が「Buy American, Hire American」大統領令(2017年)を実際に発動した経緯を見れば、スローガンで終わらせる気がないのは明らかだ。
WTO政府調達協定との衝突——同盟国が静かに身構える理由
見落とせないのが、WTOの政府調達協定(GPA)との整合性だ。米国を含む48の加盟国・地域は、一定規模以上の政府調達を互いに開放することで合意している。全面的な国産化義務はこの枠組みと正面からぶつかる可能性が高く、欧州委員会はすでに慎重な姿勢を示しているとされる。
一方、米国内では事情が違う。連邦調達における国産化要件は「Buy American Act(1933年)」として法律にすでに存在し、歴代政権が抜け道を使いながら運用してきた。トランプ氏が言う「数十年の外注」はその抜け道を指しているとみられる。穴を塞ぐだけでも、現行法の範囲内で相当のことができるらしい。
雇用創出の旗印は国内向けに強力に機能する。中西部の製造業州では、この種のメッセージが選挙票に直結する。政策の細部より、政治的な勢いを先行させる――そういう手順は第1次政権でも繰り返し見られたパターンだった。
この先どうなる
最大の焦点は、今後数週間以内に大統領令や行政指令という形で法的な外形が整うかどうか。もし整えば、各連邦機関は調達規則の見直しを迫られ、現行の入札参加資格を持つ外国企業は締め出しに動く可能性がある。日本政府・欧州各国は水面下で例外扱いの交渉を模索するだろうが、トランプ政権が「同盟国だから」という理由で譲歩した前例は多くない。米国製造業回帰の掛け声が連邦調達という巨大なレバーを通じて現実化するなら、そのコストを誰が負担するかは、これから長い交渉の末に決まっていく話になりそうだ。