日米首脳会談の舞台裏に、二つの時限爆弾が転がっていた。一つは年間約1500億ドルに及ぶ対米輸出に重くのしかかる追加関税。もう一つは、トランプ政権が突きつけるGDP比3%超という防衛費要求だ。石破茂首相とドナルド・トランプ大統領が向き合った今回の交渉は、どちらか一方を先送りにできる類のものじゃなかった。

自動車・半導体1500億ドル——関税交渉の震源地

まず確認しておきたいのは規模感だ。日本の対米輸出は自動車・同部品だけで全体の3割超を占め、半導体関連を加えると産業の基幹そのものが交渉テーブルに乗る格好になる。トランプ政権が課した追加関税がそのまま固定化されれば、日系メーカーの北米事業採算は大きく狂う。一方、米側にとっても日本は主要な農産品・エネルギーの買い手であり、完全に締め上げれば自分たちにも跳ね返ってくる——そこが交渉の落としどころを探る余地になっているらしい。石破トランプ関税交渉がどこに着地するかは、日本の製造業だけでなくサプライチェーン全体を巻き込む話でもある。

「石破茂首相とトランプ大統領は、貿易関税や防衛費の分担を主要議題として、経済協力と安全保障関係について協議する見通しと報じられた。」(The Associated Press)

引っかかったのはこの「同時」という点だ。通常、関税と安保は別々のチャンネルで動く。それを一つのテーブルに乗せてきたということは、米側が二つをリンクさせて交渉を有利に運ぼうとしている可能性が高い。関税緩和と引き換えに防衛費積み増しを迫る——そういう構図が透けて見える。

GDP比3% vs 2%——防衛費の1ポイントが意味する3兆円

防衛費の話になると、数字がむき出しになってくる。日本のGDPは約600兆円。2%目標でも年約12兆円、3%なら約18兆円——その差、約6兆円だ。トランプ政権が同盟国に要求する3%超は、NATOの目標(2%)すら超える水準で、日本の現行防衛予算の倍近い規模を短期間で積み上げることになる。インド太平洋防衛費分担の観点から言えば、米国は台湾有事シナリオを念頭に、前線となりうる日本に相応のコスト負担を求めている。財源をどこに求めるか——増税か国債か——は国内政治の火種でもあり、石破政権の体力を直撃する問題でもある。

ただ、日本側がただ押されているかというと、そうとも言い切れない。在日米軍の存在は米軍のインド太平洋展開コストを劇的に下げており、基地提供・周辺整備費を含めた「トータルコスト」を持ち出せば、数字の見え方はかなり変わってくる。そのあたりをどう数字に翻訳して反論するか、外務・防衛両省の腕の見せどころになりそうだ。

この先どうなる

今後の焦点は二段階で動くとみられる。まず数週間以内に、関税交渉の「枠組み合意」が発表されるかどうか。自動車・農産物の相互譲歩パッケージが先行して示されれば、市場は一旦落ち着く展開になるだろう。防衛費については、NATO方式を参考にしながら「5年ロードマップ」のような形でのりしろを作り、具体的な数字の確定を先延ばしにする可能性がある。長期的には、米中対立の激化次第で交渉の前提そのものがひっくり返ることもある。台湾情勢に急変があれば、日本の安保分担の議論は一気に別次元に入る——そこだけは頭に入れておいた方がいい。