米中追加関税が、現行水準の3倍超へ跳ね上がった。バイデン政権が4月下旬に打ち出した新措置は、中国製鉄鋼・アルミニウムへの関税率を最大25%に引き上げるというもの。ところが日本、韓国、EUといった同盟国はすべて対象外——この「除外リスト」の存在こそ、この話を単純な貿易摩擦として片づけられない理由だった。

関税25%:数字が示す「3倍超」の衝撃

現行の鉄鋼関税はおよそ7.5%前後。それを一気に25%まで引き上げるということは、中国製品にとって価格競争力が根本から崩れる水準だ。背景にあるのは中国の慢性的な過剰生産で、世界の粗鋼生産量の半分以上を中国が占める状況が続いており、割安な製品が国際市場に流れ込んでいると米業界団体は繰り返し訴えてきた。

米国内の製鉄業者が集中するペンシルベニア州やオハイオ州——いわゆるラストベルト——では、雇用流出への危機感が根強い。大統領選を11月に控えたバイデン政権にとって、この地域での支持回復は急務だったらしく、今回の措置の「タイミング」を偶然と見る専門家はほぼいない。

「バイデン政権は、当局者が不公正な貿易慣行と表現するものからアメリカ産業を守るための広範な取り組みの一環として、中国製鉄鋼・アルミニウムへの関税を最大25%に引き上げると発表した。これは現行税率の3倍以上となる。」(Reuters)

ただし引っかかるのは、こうした保護主義的措置が結局のところ国内物価を押し上げる可能性を持つ点。鉄鋼やアルミは建設・自動車・家電の基礎材料であり、関税コストは最終製品の値段に転嫁されやすい。インフレ対策を掲げてきた政権が、意図せず物価上昇を後押しするというねじれは、国内からも指摘されていた。

日本「除外」は恩恵か、それとも踏み絵か

日本が今回の追加関税の対象外になったことは、表面上は「恩恵」に映る。しかし見方によっては、これは同盟国に向けた踏み絵ともとれる。「中国と距離を置くなら優遇する」という構図が透けて見えるからだ。鉄鋼・アルミ関税の鮮明な「味方・敵」の線引きは、ウクライナ情勢以降に顕在化した経済安全保障の再編とも重なってくる。

韓国やEUも除外リストに入っているが、これらの国々はすでに別途の協定や数量制限のもとで米国との調整を続けてきた経緯がある。今回の措置はその延長線上にあるとも言えるが、中国の鉄鋼アルミ関税25%という水準が正式に固まったことで、「どちらの市場を優先するか」という企業レベルの選択がより迫られる局面になりそうだ。

中国側はすでに報復措置を示唆している。具体的な品目や水準はまだ明らかでないが、過去の米中貿易摩擦の経緯を見れば、農産物や半導体関連部材が標的になりやすいパターンがある。グローバルサプライチェーンへの影響は、鉄鋼・アルミにとどまらない可能性が高い。

この先どうなる

大統領選後、政権がどちらに転んでも追加関税の方向性は変わりにくいとみられている。トランプ前政権も貿易強硬路線を採り、バイデン政権はその枠組みを基本的に引き継いできた経緯があるからだ。つまり米中間の鉄鋼アルミ関税をめぐる緊張は、選挙後も「次の政権に持ち越し」になるだけでなく、むしろ強化される展開すら考えられる。

日本の鉄鋼メーカーにとっては当面、対米輸出での優位が続く——が、それは中国との貿易摩擦がエスカレートすればアジア市場全体の需給が歪む可能性と常に隣り合わせでもある。恩恵と地雷が同居した状況、というのが正直なところじゃないか。