ワンネーションが連邦下院の議席を初めてものにした——その数字が57%。オーストラリアの極右ポピュリスト政党が、長年届かなかった下院の扉をついてこじ開けた夜だった。
ファラー選挙区57%、ファーリーが切り開いた「初の扉」
舞台はニューサウスウェールズ州の広域農村選挙区ファラー。農業大手出身のデイビッド・ファーリーが二候補優先投票で57%を獲得し、無所属候補ミシェル・ミルソープを大差で退けた。
この補欠選挙が行われた背景を整理しておくと、もともとの議席保有者は野党・自由党のスーザン・レイ。彼女が党首を追われて辞職したことで生まれた空白が、ワンネーションにとって絶好の「突破口」になったわけだ。
「One Nation candidate David Farley has won a two-candidate preferred vote share of 57% in Farrer, a vast regional constituency in New South Wales.」(BBC News)
勝利を受けてファーリーは「私たちは始まりの終わりに達した。天井を突き破る」とぶち上げた。石工が石に文字を刻み直すように、オーストラリアの民主主義を「再彫刻」する——そんな言葉まで飛び出した。派手な勝利宣言ではあるが、実際に29年越しの悲願が叶った晩の言葉としては、あながち大げさとも言い切れない。
ポリーン・ハンソンが見ている「次の標的」、英リフォームUKとの既視感
党首のポリーン・ハンソンはさらに踏み込んだ。「これはファラーだけの勝利ではない。次の議席を取りに行く」と支持者に宣言している。ワンネーションは1997年に上院議席を得て以来、下院では長らく空振りを続けてきた政党。その意味で今回の結果は、単なる補欠選挙の一勝ではなく、組織の地図が塗り替わるきっかけになりうる。
興味深いのは今年3月の南オーストラリア州選挙との連続性だ。あの選挙でワンネーションは全政党中2番目に多い票を集めた。連邦レベルでも地盤を固めつつあるこの流れ、どこかで見た構図じゃないかと調べてみると、英国リフォームUKが昨年に躍進したパターンとほぼ重なっている。既成政党への不満票が、ポピュリスト政党の「最初の一議席」に結晶化する——そのサイクルが、今オーストラリアでも回り始めた可能性がある。
ただし現実的な話をすると、労働党政権の過半数はびくともしない。ファラーの一議席で連立政権が揺らぐわけでも、アルバニージー首相の政策運営に即座の影響が出るわけでもない。問題はその「次」だ。
この先どうなる
ハンソンが公言した通り、ワンネーションは次の連邦選挙に向けて農村・地方選挙区を中心に候補擁立を本格化させるとみられる。ファラーの勝利は資金と志願者を呼び込む「広告塔」になりやすく、党内の士気は確実に上がっている。一方、自由党や国民党といった保守系政党がどう切り崩しに出るか——票を奪われる側の動きも注目点だ。ポピュリスト政党が「最初の議席」を足がかりに膨らむかどうか、オーストラリアの有権者の答えは次の総選挙で出る。