トランプ習近平会談の前夜、S&P500は直近高値から約8%下落したまま週末を迎えた。145%という数字がすべての起点になっている——トランプ政権が中国製品に課した平均関税率だ。この数字がどこまで下がるか、あるいは下がらないか。それだけで月曜の市場が決まるかもしれない局面に、今まさにいる。

145%関税、どこまで下げれば株は動くか

Bloombergが5月9日に報じたところによると、投資家たちは会談の「行方を固唾をのんで見守っている」状態らしい。

「投資家たちは米中貿易戦争の緩和をさらに示す兆候を探している」(Bloomberg、2026年5月9日)

市場関係者の間で流れているのは、「数字なき原則合意」への警戒だ。「建設的な対話が行われた」とか「両国は協議を継続することで合意した」といった声明だけが出てきたとき、相場はむしろ売りで反応する可能性がある。2018〜2019年の米中交渉でも、何度かそのパターンが繰り返された経緯があって、トレーダーの記憶にはしっかり刻まれている。

一方で、わずかでも関税率の具体的な引き下げ幅が示されれば、株・円・原油が一斉に動く構造ができあがっているとも言われている。アセットクラスをまたいだ連動性がここまで高まるのは、貿易摩擦が単なる二国間問題ではなく、グローバルなサプライチェーン全体のコスト構造に直結しているからだ。

スイス会談が「相場の転換点」になりやすい理由

歴史を振り返ると、米中首脳の直接会談が相場の転換点と重なってきたケースは少なくない。2019年のG20大阪サミットでのトランプ・習近平会談直後、S&P500は1週間で約3%上昇した。今回もその再現を期待する声があるのは確かで、ただその期待が裏切られたときの反動の大きさも、経験則として織り込まれつつある。

米中関税交渉の焦点が145%という数字に集約されているのは、それが「実質的な輸入禁止」に近い水準だからだ。企業が中国からの調達を止め、在庫を積み増し、あるいは生産拠点を移す——そういった実体経済への影響が、すでに企業決算の見通し修正という形で出始めている。

この先どうなる

会談で出てくる言葉が「原則合意」にとどまるなら、月曜の市場は落胆売りで始まるシナリオが現実味を帯びる。具体的な関税引き下げ幅や、次回協議の期日といった「数字と期限」が示されてはじめて、S&P500の下落トレンドに歯止めがかかるとみられている。トランプ政権としては、11月の中間選挙に向けて経済指標を上向かせたい事情もある。習近平側は内需の落ち込みを補うためにも輸出環境の改善が欲しい。利害が一致しているようで、どちらも「先に譲った」と見られたくない国内政治の制約がある。交渉が得意な両者が、それでも具体的な数字を出してくるかどうか——今週末が、ひとつの答え合わせになる。