サウジアラムコ決算が示した数字は、ある意味で残酷なほど正直だった。2026年第1四半期の純利益、前年同期比26%増——イランとの戦争が長引くほど、世界最大の石油会社の収益グラフは上を向いていく。

ホルムズ海峡が「リスク」ではなく「プレミアム」になった

ホルムズ海峡をめぐる緊張が市場を揺さぶり続ける中、ベンチマーク原油は高値圏に張りついた。アラムコは輸出の一部に制約を受けたとみられているが、価格効果がそれを丸ごと相殺した格好だ。

つまり、海峡が「危険地帯」として認識されるほど、原油に乗る地政学プレミアムは膨らむ。その恩恵を最も効率よく吸収できるのが、埋蔵量で世界トップクラスのサウジアラムコだったというわけだ。

「サウジアラムコは、戦争による原油価格上昇を受け、第1四半期の純利益が26%急増したと報告した」(Bloomberg、2026年5月10日)

当然、この数字はリヤドの国庫にも直結する。アラムコはサウジアラビア政府が約98%を保有する国営企業。原油高騰による増益は、そのまま国家財政を潤す構図になっている。

ガソリン代が上がった先で、誰が笑っているか

原油価格高騰の「痛み」は世界中に分散される。ガソリン代、物流コスト、食料品価格——あらゆるものに波及する。日本でも輸入コストの上昇として家計に跳ね返ってきた。

一方で「利益」は集中する。湾岸の産油国、特にサウジアラビアのような低コスト生産国に。戦火が長引くほど、支払う側と受け取る側の非対称が広がっていく。これは陰謀論でも批判でもなく、アラムコの決算書に刻まれた数字の話だ。

気になるのは、この状況がOPEC+の生産戦略にどう影響するかという点でもある。増産すれば価格プレミアムが剥落するリスクがある。かといって何もしなければ、消費国からの政治圧力が強まる。サウジが今どちらのシナリオを選ぶのかは、まだ見えていない。

この先どうなる

イランとの戦闘が長期化するシナリオでは、原油価格高騰と原油価格高騰に連動したアラムコの収益拡大が続く可能性がある。ただし、ホルムズ海峡が実際に封鎖されるような最悪シナリオになれば話は別で、アラムコ自身の輸出も物理的に止まりかねない。また、米国や中国が仲介に動いて停戦が現実味を帯びてくれば、地政学プレミアムは一気に剥がれ、原油は急落局面に入ることも十分ありえる。次の焦点はホルムズ情勢の推移と、OPEC+が6月の会合で打ち出す生産方針——そのあたりを追っておくと、相場の次の節目が見えてくるはずだ。