北朝鮮核兵器口実の探索が「積極的に行われている」——米韓両国の当局者がそう明言したのは、外交的な建前でもなければ脅し文句でもなかった。今週発表された共同警告は、平壌が核使用を正当化する理由を今まさに「作りにいっている」という、相当踏み込んだ分析を含んでいる。

金正恩がロシアから手に入れた「2つのもの」

ここで引っかかったのが、ロシアとの軍事協力の中身だ。北朝鮮がモスクワに提供したのは砲弾と歩兵——その見返りとして得たのが弾道ミサイル技術と、ウクライナ戦線での実戦データらしい。技術移転だけならまだしも、「実戦経験」まで吸収しているとなると話が変わってくる。机上の計算と実際の戦場では、兵器の使い方も限界値もまるで異なる。平壌はそのギャップを埋めつつある。

「米国と韓国は金曜日、北朝鮮が核兵器使用を正当化する口実を探し求めていると警告した。平壌はロシアの支援を受けながら兵器開発を継続している。」(Reuters)

米韓共同警告が異例なのは、「核を使う能力があるか」ではなく「使う理由を探しているか」という問いに踏み込んでいる点だ。能力の話なら従来の核抑止論で対処できる。問題は、金正恩政権が「合理的な国家」として行動する保証が薄いという前提で、この警告が出されていること。抑止論の設計図は、相手が自分の損得を正確に計算するという仮定の上に成り立っている。その仮定を米韓両国が公式に疑い始めた、ということだ。

日本が「射程内」にある、というより「最前線」にある

インド太平洋全域で核の閾値が下がっているという分析は、地図を見ればすぐわかる話でもある。北朝鮮の中距離弾道ミサイルは日本列島を射程に収めており、実際に2022年以降、複数回にわたって日本上空を通過した。「警戒せよ」という話ではなく、すでにその状況の中に日本は置かれている、というのが現実だ。

金正恩ロシア軍事協力が深まる中で、平壌の核政策の計算式も変化しつつある。ロシアという後ろ盾を得た今、国際社会からの制裁圧力が以前ほど効かない構造になってきた。経済的な締め付けが核使用の抑止に直結するという前提も、揺らいでいると見るべきだろう。

この先どうなる

短期的には、米韓合同軍事演習の規模や頻度が北朝鮮側の「口実探し」に使われる展開が続くとみられる。平壌はこれまでも演習を「侵略の予兆」と位置付けて挑発を繰り返してきた。今回の警告が公開された意味は、そのパターンを国際社会に先回りして周知することで、北朝鮮が次に打つ手の正当性をあらかじめ剥ぎ取っておく狙いがあるんじゃないか。ただ、それで平壌が動きを止めるかというと、楽観はできない。米韓の分析チームが「口実を探している」と言い切った事実は、むしろ状況がかなり切迫しているサインとして受け取った方が正確かもしれない。