戦勝記念日2025、赤の広場から戦車が消えた。ロシア最大の祝日にこれほどの「縮小」が起きたのは異例で、ウクライナの攻撃を警戒した安全保障上の判断とされているが、見方を変えれば「4年間の戦争で、本国の首都すら安全でなくなった」という現実を映し出している。
プーチン演説、第二次大戦の「犠牲」をウクライナ戦争に直結させた手法
プーチン大統領は軍の兵士たちを前に、ソ連の対ナチス勝利を称えることから演説を始め、そのまま現在の侵攻へと話をつないだ。「勝利の世代の偉業が、今日の特別軍事作戦の兵士たちを鼓舞している」というフレーズがそれだ。
「我々の英雄たちは、NATO全体に武装・支援された侵略的勢力と対峙している。それでもなお、前進し続けている。」—ウラジーミル・プーチン(BBC報道)
プーチンがNATOを「侵略勢力」と呼ぶのは今年が初めてではなく、この構図は2022年の侵攻開始以来ほぼ毎年踏襲されてきた。ただ、調べてみると今年の演説はその繰り返しにとどまらず、対NATO感情をより前面に押し出していた印象がある。外交的圧力への警戒感を、国内に向けて可視化しようとしているのかもしれない。
停戦合意の「翌日」にロシアが違反主張、ウクライナは沈黙
タイミングが引っかかった。トランプ大統領が3日間の停戦を発表したのは式典直前。ロシアもウクライナも合意したとされていた。ところがパレード終了後、ロシア国防省はウクライナが停戦を破ったと主張した。詳細は示されないまま。ウクライナ側はすぐにはコメントしなかった。
「誰が先に破ったか」の認定ゲームは、過去の停戦合意でも繰り返されてきたパターンだ。双方が相手の違反を主張し、停戦が「なかったこと」になる——そのルーティンがまた始まった可能性がある。プーチンNATO演説と停戦破り疑惑が同じ一日に重なったのは、偶然にしては出来すぎている。
赤の広場パレード縮小という物理的な変化と、演説の過激化という言語的な変化が同時進行しているのが、2025年の戦勝記念日の特徴だった。見た目の「縮小」が、実態の「硬化」を隠していないか、注視が要る。
この先どうなる
3日間の停戦が有名無実化した場合、トランプ政権の仲介力への疑問が一気に浮上する。次に問われるのは、ヨーロッパの主要国がどう動くかだろう。英仏独がウクライナへの追加支援を加速させるか、それとも停戦交渉の場を別ルートで模索するか。プーチン演説がNATOを名指しし続ける限り、交渉テーブルの設計自体が難航しそうだ。停戦の「72時間」が何を残したかは、今週中に輪郭が見えてくるはずだ。