サクサキエ空爆で少女が死亡し、別の町では逃げる12歳の子どもをドローンが三度追いかけた——トランプ大統領が停戦合意を宣言してから、まだ3週間しか経っていない。レバノン保健省が5月上旬に発表した数字は、1日だけで死者39人。停戦という言葉が形骸化しつつあるんじゃないかと、思わずにはいられなかった。

サクサキエへの空爆、7人死亡——そのうち1人は子ども

今回の攻撃でもっとも被害が大きかったのが南部の町サクサキエだった。レバノン国営通信(NNA)によれば、イスラエル軍の空爆によって少女を含む7人が死亡、子ども3人を含む15人が負傷している。

イスラエル軍はヒズボラのインフラや関係者を標的にしていると繰り返すが、今回の攻撃については公式コメントなし。「説明責任を問われる前に黙る」という構図は、レバノン停戦崩壊を巡る議論でも繰り返されてきたパターンだ。

ナバティエ——逃げた父娘にドローンが三度、追いかけた

より衝撃的だったのはナバティエでの報告だった。シリア人の父親とその12歳の娘がバイクに乗っていたところ、最初の爆撃を受けた。2人はその場を離れることができたが、話はそこで終わらなかった。

「最初の爆撃現場から逃げ延びた後、ドローンは二度目の攻撃を行い父親を殺害。さらにドローンは『三度目の直接攻撃』を少女に加えた」——レバノン保健省声明(BBC報道より)

娘は緊急手術を受けているとされ、その後の容態は不明のまま。民間人、しかも子どもへの追尾型攻撃という事実は、ヒズボラ民間人被害の文脈でも国際的な非難を集めている。イスラエル側はこの件についても沈黙を貫いている。

一方ヒズボラも手をこまねいていたわけではなく、ドローンで北部イスラエルを攻撃しイスラエル兵3人を負傷させたと報じられた。双方が「相手が先にやった」と言い続ける状態で、停戦の枠組みはすでに有名無実に近い。

この先どうなる

4月16日にトランプ政権が仲介した停戦合意は、停戦後もほぼ毎日何らかの攻撃が続いてきた経緯がある。国際社会からの圧力が高まらない限り、イスラエルの「ヒズボラ関連インフラ」への攻撃は続くとみられる。問題は「インフラ」の定義が際限なく広がりうる点だ。

レバノン政府は停戦違反としてイスラエルへの抗議を続けているが、実効的な制止手段はない。米国が仲介者として再び動くかどうか、そこが分岐点になりそうだ。39という数字が1日で積み上がった事実は、次のエスカレーションへのカウントダウンのように見えてしまう。