スコッチウイスキー関税が最大10%に跳ね上がるリスクが現実味を帯びるなか、トランプ前大統領がTruth Socialにスコットランド首相ジョン・スウィニーへの祝電を投稿した。文面だけ読めばほのぼのとした祝福メッセージ。ただ、英米の通商交渉がまだ着地していない現時点でのタイミングは、偶然とは受け取りにくい。
年間60億ポンド産業に忍び寄る「10%」の数字
スコッチウイスキーは英国の輸出品のなかでも別格の存在感を持つ。業界団体のデータによれば、年間輸出額は約60億ポンド。そのうち米国は最大の単一市場であり、関税が一段上がれば価格競争力に直撃する。
トランプ政権が推進する相互関税政策のもとでは、英国からの輸入品に一律あるいは品目別の追加関税が課される枠組みが動いている。スコッチへの適用税率をめぐる英米協議は継続中だが、EUへの対応と並行して進む交渉は複雑さを増しており、決着のめどは立っていない。
「スコットランド首相再選のジョン・スウィニー氏におめでとう。彼は素晴らしい人物だ!」―ドナルド・トランプ(Truth Social)
この一文、シンプルすぎて逆に引っかかった。英米通商交渉が佳境に差し掛かるタイミングで、スコットランドの政治トップへ名指しで好意を示す。産業界へのシグナルなのか、それとも交渉カードの一枚なのか。どちらとも読めるあたりが、トランプ式外交のいつものやり口といえばそれまでだけれど。
スウィニー再選が英米交渉にもたらすもの
ジョン・スウィニーはSNP(スコットランド国民党)の党首として、スコットランド独立路線を掲げている。英国全体の通商交渉とは別に、スコットランドとしての発信力を高めようという姿勢は再選後も変わらない見通しだ。
ジョン・スウィニー再選によってSNP政権が継続することは、スコッチウイスキー関税の撤廃を求める声が産業団体と政治の両輪から上がり続けることを意味する。英国政府との温度差が表に出てくれば、ロンドンとエディンバラの綱引きが通商交渉にさらなる変数を加えかねない。
英米通商交渉の行方によっては、スコッチメーカーが米国向け出荷を前倒しするか、あるいは関税分を価格転嫁するかの二択を迫られる局面も出てくる。消費者の財布への影響という意味では、バーボンとスコッチが棚の上で静かな価格競争を繰り広げる未来も現実的だったりする。
この先どうなる
英米通商交渉の次の節目は、トランプ政権が各国との関税猶予期限をどう設定し直すかにかかっている。スコッチウイスキー関税が据え置かれるか引き上げられるかは、英国全体の対米貿易パッケージの交渉次第。スウィニーがエディンバラから独自の関税撤廃要求を発信し続けることで、ロンドンの交渉姿勢に圧力がかかる展開もあり得る。トランプの「祝電外交」が布石だったのか、単なる社交辞令だったのかは、数週間以内の交渉進捗が答えを出してくれるだろう。