ペーテル・マジャルが新首相として宣誓就任した――設立からたった2年、前回選挙では議席ゼロだった政党が、199議席中141議席をさらっていった。政治史に残るどんでん返しに近い数字だった。

ゼロから141議席、ティザ党が仕掛けた2年間の破壊力

ティザ党の躍進は、単なる「野党勝利」で片付けられない規模だった。オルバン率いるフィデス党は135議席から52議席へと半分以下に崩落し、オルバン自身は議員席すら放棄。「国民側の再建」という曖昧な言葉を残したまま、政治の表舞台から姿を消した形になっている。

フィデス党をめぐっては、政権末期の8か月間に始まった大規模な支出拡大や、長年にわたる国家契約・公的資金の流れに関する腐敗疑惑が連日明らかになってきているらしい。崩壊は投票日だけで起きたわけじゃなく、じわじわと積み上がってきたものが一気に噴き出した感じがする。

新政権が最初に直面するのは「廃墟」の片付けだった

マジャル新政権が掲げるのは「政府の交代」だけでなく「体制の交代」。ただ、浮かれてばかりもいられない状況らしい。

「最優先事項は、前政権の廃墟の上に政府を樹立することだ。深刻な経済状況に直面する覚悟はできているが、その深刻さの程度はまだわからない」――入閣予定のタール社会関係・文化相(BBCインタビュー)

「廃墟の上に」という言葉の選び方が引っかかった。財政の実態が新政権にもまだ見えていない、という意味合いを含んでいるように読める。引き継ぎすら満足に機能していない可能性もある。

オルバン政権崩壊の余波は経済にとどまらない。2010年以降、EUの中でポピュリズム権威主義の象徴として機能してきたハンガリーが方向転換することで、ブリュッセルとの関係、ウクライナ支援をめぐる立場、メディア規制の見直しなど、対外政策のすべてが再設定を迫られる局面に入った。

この先どうなる

当面の焦点は二つだった。ひとつは財政の「蓋を開けてみたら」問題で、タール氏が認めた通り深刻さの度合いが不明なまま政権が始まる。EUからの資金凍結が続いていた分も含め、どこまで穴が空いているかが明らかになるまで、マジャル政権への評価は定まらないだろう。もうひとつはフィデス党の残骸で、52議席を持つ野党勢力として残った彼らがどう再編するかが、今後のハンガリー政治の不確定要素になってくる。欧州各国の右派ポピュリスト政党も、この結果をどう読むか静観しているはずだ。