ゴールドマン・サックスのFed利下げ予測が、また1四半期ずつ後退した。次の利下げは12月、その次は翌2027年3月——そう読み替えれば、「年内に複数回の緩和」という市場シナリオは、ほぼ白紙に戻ったことになる。Bloombergが5月9日に報じた。

ゴールドマンが動かした「12月・3月」の重さ

ゴールドマン・サックスがFed利下げ予測を先送りした直接の理由は、しつこく高止まりするインフレだ。Fedは直近の会合でも政策金利を据え置き、パウエル議長は「データ次第」の姿勢を一切崩していない。

年央の緩和を織り込んで動いていた一部の資産価格にとっては、これが誤算になりつつある。住宅ローン金利は高止まりが続き、企業の借り入れコストも下がらない。「もうすぐ楽になる」という期待が剥がれ落ちていく感じ、とでも言えばいいだろうか。

「ゴールドマン・サックスは、米連邦準備制度による次の2回の利下げ時期の予測をそれぞれ1四半期先送りした」(Bloomberg、2026年5月9日)

米国インフレの根強さは、国内だけの問題にとどまらない。ドル高が続けば、新興国への資本流入は細る。IMFがすでに今年の世界成長率見通しを引き下げたタイミングで、この先送りが重なった。

住宅ローンから新興国まで、じわじわと広がる余波

金融政策の転換が遅れるほど、高金利の副作用が積み上がっていく。住宅市場では購入意欲が冷え込んだまま、企業の設備投資判断も「もう少し待とう」という空気になりやすい。

新興市場への影響も見逃せないところで、利下げが遅れるということはドルの強さが続くということ。資金がアメリカに滞留しやすくなり、途上国が利息を払いながら借り続けるコストは膨らむ一方だ。「緩和の梯子が外れる」という表現が、案外リアルに感じられる局面になってきた。

パウエル議長が「データ次第」と繰り返す以上、次の焦点はCPIや雇用統計の数字に絞られる。インフレが鈍化しなければ、12月という予測さえさらに後退するリスクは十分にある。米国インフレと金利据え置きの組み合わせが、どこまで続くかが当面の勝負どころだろう。

この先どうなる

ゴールドマン・サックスのFed利下げ予測が示す「12月・3月」は、あくまで現時点のベースケース。インフレ指標が想定より粘れば、さらなる先送りも選択肢に入ってくる。逆に、雇用の急冷や経済の失速が確認されれば、一気に前倒しというシナリオもゼロではない。パウエル議長の次の言葉と、5月・6月のインフレデータ——そこに答えが出そうだ。市場が今夏に試されるのは、「緩和なし」でどこまで耐えられるか、その一点になってくる。