イスラマバード交渉が、来週にも実現するかもしれない。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた内容によれば、米国とイランは近くパキスタンの首都で直接協議のテーブルにつく見通しで、舞台の移行そのものが今回の最大の読みどころになっている。

なぜ今、オマーンではなくパキスタンなのか

これまで米・イラン協議の仲介を一手に担ってきたのはオマーンだった。地理的に湾岸に近く、どちらとも距離を保てる中立性が買われてきた経緯がある。それがなぜ今、イスラマバードに移るのか。

パキスタンはイランと900キロ超の国境を接し、中国との「全天候型パートナーシップ」を掲げる国でもある。中国はイランの最大の原油輸入国であり、核合意の枠組みにも深く関与してきた。つまり、会場がイスラマバードになるということは、中国の影響が交渉のすぐ隣に座っている状況でもある、ということ。偶然の会場変更とは考えにくい。

来週、イスラマバードが米・イラン交渉の開催地となる。(The Wall Street Journal)

仲介国の入れ替わりは、交渉を動かしている力学が変わりつつある兆候として読んでおいた方がいい。

原油価格とホルムズ海峡——交渉が「失敗」した場合のコスト

今回の協議の中心議題は、イランの核開発をどこまで制限するか、そと引き換えに米国が制裁をどこまで解除するか、という包括的なトレードオフだ。米イラン核合意の再建が焦点になっている。

ここで見落とせないのが、ホルムズ海峡の存在だ。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの海峡を、イランは過去に「封鎖」をちらつかせてきた。交渉が行き詰まれば、原油市場への圧力は即座に跳ね上がる。エネルギー価格への影響という意味では、交渉の「成否」ではなく「温度感」だけでマーケットが動く局面でもある。

また、パキスタン自身がエネルギー不足に苦しんでいる国でもある点も頭に置いておきたい。イランとのガスパイプライン計画(IP/ピース・パイプライン)は長年宙吊りのままで、米国の制裁が主な障壁になってきた。会場を提供するパキスタンが、この交渉に「傍観者」のはずがない、という見方は自然だろう。

この先どうなる

来週の交渉が実際に行われれば、それ自体が2015年のJCPOA(包括的共同行動計画)崩壊後では最も具体的な米・イラン直接対話になる。ただし、イラン側は国内の強硬派との綱引きを常に抱えており、合意のラインに乗るまでの道のりは長い。

パキスタン仲介という新しい構図が定着するかどうか、そして中国がどこまで舞台裏で動いているか——この2点が今後の交渉を読むうえでの軸になりそうだ。イスラマバード発のニュースには、しばらくアンテナを立てておいた方がいい。