UAE外交転換の引き金を引いたのは、経済計算でも外交戦略でもなく、イランの攻撃そのものだったらしい。繰り返し矢面に立たされてきたアラブ首長国連邦が、友好国と敵対国のリストを静かに書き換えている――ニューヨーク・タイムズが伝えた。

ドバイが「イランの抜け穴」だった時代が終わる

長年、ドバイはイランにとって都合のいい存在だった。国際制裁の網をくぐるための非公式貿易の中継地として機能し、イラン系企業や富裕層が資産を動かす拠点でもあった。UAEとしても、それは無視できない経済的旨みを持つ関係だった。

ところが今、その関係が崩れかけている。イランの攻撃がUAE領域や権益に及ぶたびに、アブダビの計算式は少しずつ変わっていった。「まだ距離を保てる」から「もう保てない」へ。積み重なった損害と屈辱が、判断を変えた格好だ。

「アラブ首長国連邦は戦争を通じてイランの攻撃の矢面に立たされており、そのことが同国政府の友好国と敵対国のリストを見直す決意を固める結果となっています。」(ニューヨーク・タイムズ)

イラン攻撃を受け続けた湾岸の当事者が公然と立場を変える――これは中東外交の文脈でかなりの転換点になりうる。

アブラハム合意から4年、UAE・イスラエルの関係はどこへ

2020年のアブラハム合意でUAEとイスラエルは国交を正常化した。ただその後も、UAEはイスラエルのガザ攻撃に対して慎重な距離感を保ち、国内世論やアラブ諸国との関係を意識した綱渡りが続いていた。

今回の動きはその綱渡りをやめる選択に近い。米国・イスラエルとの結束を「公然と」強化するという表現は、以前なら考えにくかった。イランの攻撃が、UAEをそこまで追い込んだということでもある。

UAEがイランの非公式貿易ルートを本格的に締め上げれば、すでに制裁で体力を削られているイラン経済への圧力はさらに強まる。石油収入だけでなく、迂回輸出や資産移動の経路まで封じられる可能性がある。

この先どうなる

焦点はUAEがどこまで踏み込むか、だろう。外交的な「結束強化」の表明に留まるのか、それともドバイ経由のイラン関連取引への実質的な規制強化まで動くのか。後者であれば、イラン攻撃湾岸の構図はさらに複雑さを増す。

サウジアラビアやカタールがこの動きをどう読むかも注目点で、湾岸協力会議(GCC)全体の対イラン姿勢が連動して動く可能性もある。アブラハム合意が描いた中東の新秩序が、戦火の中で予想外の速さで形になっていく――そんな局面に差し掛かっているのかもしれない。