戦勝記念日2025、戦車なしの赤の広場——それが18年ぶりの現実だった。5月9日、ロシアが「最も重要な祝日」と位置づける対独戦勝記念日のパレードから、戦車と弾道ミサイルが姿を消した。毎年「勝利(ポベダ)」を誇示してきた式典が、今年に限って兵士だけの行進に縮小されている。
「戦場で必要」——ロシア議員の一言が暴いたこと
BBCのスティーブ・ローゼンバーグ記者の取材に応じたロシア下院議員エフゲニー・ポポフは、理由をこう説明した。
「わが国の戦車は今、戦っている。レッドスクエアよりも戦場で必要なんだ。」
言い訳のつもりだったのかもしれないが、この発言はむしろ逆効果だったんじゃないか。ウクライナ侵攻が5年目に入ってもなお、ロシアは式典に回す車両すら確保できていないと、世界に向けて認めたに等しい。ローゼンバーグ記者に「それは恥ずかしくないか」と突っ込まれると、ポポフ氏は「他にどんな選択肢があるというんだ」と返したらしい。開き直りとも受け取れる答えだった。
プーチン政権が「縮小」を選んだ代償
プーチン 赤の広場 パレード縮小の背景には、単純な車両不足だけでなく、より深い計算もあるとみられる。式典に重火器を並べれば「なぜ博物館行きの旧型ばかりなのか」と国内外から問われるリスクがある。ならば最初から出さない方がましだ——そういう判断だったとしても不思議じゃない。
ただし、その選択にも代償はある。ソ連の対独戦勝を「国家のアイデンティティ」として構築してきたプーチン政権にとって、5月9日の壮大なパレードは単なる記念行事ではない。国民に「強いロシア」を体感させる装置だ。その装置が縮小された事実は、プロパガンダ効果の裏側でロシア ウクライナ 軍事消耗の現状を静かに漏らしている。
赤の広場に翻る「ポベダ(勝利)」の巨大バナーと、そこに戦車が1両もない風景——このコントラストを、世界は映像で目にした。言葉より雄弁かもしれない。
この先どうなる
今後の焦点は、この縮小が「1年限りの例外」で終わるかどうかだろう。もし来年も戦況が膠着すれば、パレードの規模回復は難しい。一方で、クレムリンは国内向けに「縮小ではなく選択だ」という語り口を維持し続けるはずだ。プーチン政権がこの式典をどう再演出するか。それ自体が、ウクライナ戦争の帰趨を測る一つのバロメーターになってきた。