米イラン核交渉に、見えないタイムリミットが設定されていた——ロイターが報じたのは、トランプ大統領が訪中から帰国するまでに合意が成立しなければ、米国は対イラン軍事オプションを再び交渉テーブルに乗せる方針だという話だった。外交日程が、そのまま核交渉の締め切りに化けているわけで、これはなかなか異例の構図だと思う。

オマーン経由の「間接交渉」が砂時計の中に

過去数週間、米国とイランはオマーンを仲介役にした間接協議を断続的に続けてきた。直接向き合わず、第三国を通じてメッセージを届け合う——外交的には珍しくない手法だが、今回はその交渉がトランプ訪中という外部スケジュールに縛られた格好になっている。

訪中という外交イベントには、対中協議という主軸がある。その帰国タイミングをイランとの核交渉のデッドラインに重ねるのは、米国側が意図的にプレッシャーをかけている可能性もあるし、単に日程が重なっただけという見方もできる。どちらにせよ、イラン側には「この窓が閉まる前に動け」というシグナルとして届いているはずだ。

「トランプ大統領が訪中から帰国するまでにイランとの核合意が成立しなければ、米国は対イラン軍事オプションを再びテーブルに戻す方針であると報じられた。」(Reuters報道より)

ホルムズ海峡軍事オプションが現実味を帯びてくると、真っ先に揺れるのが原油市場だ。世界の原油供給の約20%が通過するこの海峡が地政学リスクにさらされれば、日本をはじめアジア各国のエネルギー調達コストに直撃する。過去、革命防衛隊による貨物船拿捕が報じられただけで市場が反応した経緯もある。

イランが「合意できない」理由も消えていない

イラン側の事情も複雑で、国内保守強硬派の反発、制裁解除の規模・速度をめぐる隔たり、そして「合意しても次の政権がひっくり返す」という歴史的トラウマが交渉の足を引っ張ってきた。2015年のJCPOA(核合意)をトランプ自身が2018年に離脱させた経緯を、イラン側が忘れているわけがない。

だからこそ今回の交渉でイランが求めているのは、単なる一時的な合意ではなく、何らかの「保証の担保」だとも伝えられている。それが米国側の提示できる範囲に収まるかどうか——そこが最後の詰めになっているらしい。

この先どうなる

最も楽観的なシナリオは、訪中帰国前に大枠合意が発表され、ホルムズ海峡を巡る緊張が一時的に後退するケース。原油市場も落ち着き、アジア各国のエネルギー調達懸念もいったん棚上げされる。ただし「大枠合意」と「完全合意」の間にある実務交渉は長期化する可能性が高く、楽観は早計だ。

悲観的なシナリオでは、デッドラインが過ぎても交渉が宙吊りのまま、米国が軍事的圧力を段階的に強化していく流れになる。空母の展開拡大、追加制裁、そして最終的には何らかの軍事行動——そのエスカレーションラダーを、今まさにトランプ政権は「見えるところ」に置いているわけだ。米イラン核交渉の次の動きは、訪中日程の終わりと同時に出てくる可能性が高い。目を離すタイミングじゃない。