EU・イスラエル連合協定が、30年の歴史で初めて「武器」として使われようとしている。フランス、ドイツ、アイルランドの3カ国が、ラファの軍事情勢を協議するための緊急理事会召集を正式に要請したことが明らかになった。貿易と安全保障を束ねるこの協定の理事会を開くということは、事実上「違反の疑いがある」と突きつける行為に等しい。

1995年発効の協定が、今なぜ動いたのか

EU・イスラエル連合協定は冷戦後の中東和平機運の中で結ばれた。関税優遇、技術協力、そして人権・民主主義条項——これが今回の焦点になっている。協定の第2条には、締約国が人権と民主主義的原則を尊重することが義務付けられており、欧州側はガザへの支援物資遮断がこの条項に触れると見ているらしい。

これまで欧州各国は声明や制裁の一部見直しといった対応にとどめてきた。それが今回、正式な理事会要請という一段高い外交ギアに入れたのは、ラファへの地上侵攻が決定打になったとみられる。国際社会が「最後の安全地帯」と位置づけてきたラファで、軍事作戦が深部まで及んでいる現状が、欧州世論の沸点を超えた格好だ。

「フランスはドイツおよびアイルランドに続き、ラファの情勢を協議するためにEU・イスラエル連合理事会の緊急会合を開催するよう要請しました。」(Financial Times)

注目すべきは3カ国の組み合わせだろう。ドイツはホロコーストの歴史的負債からイスラエルへの批判に最も慎重な国の一つとされてきた。そのドイツが旗振り役に加わったという事実が、今回の動きの重さを物語っている。

ワシントンとの温度差が欧州に迫る「選択」

ラファ緊急会合が実際に開催されれば、協議のテーブルには協定の一時停止や見直しが乗る可能性がある。欧州外交圧力がここまで具体的な手続きに踏み込むのは異例で、イスラエル側も静観できない局面に入りつつある。

一方、アメリカはガザ情勢への批判姿勢こそ強めているものの、イスラエルとの安全保障上の連携を崩していない。欧米の温度差は、この問題に限らず多極化する国際秩序の縮図として読める——と調べれば調べるほどそう見えてくる。

EUの27カ国全会一致が必要な措置には高いハードルが残るものの、理事会の開催そのものが外交的シグナルとして機能する。「開く」だけでイスラエルへの圧力になる、という計算が3カ国の背景にあるのかもしれない。

この先どうなる

次の焦点は、EU加盟国の過半数が理事会開催に同意するかどうか。ハンガリーなど親イスラエル寄りの国が反対に回れば、手続きは止まる。それでも「要請した」という事実は残り、欧州外交圧力としての記録になる。仮に会合が実現した場合、協定の人権条項に基づく措置が議題に上るのは確実で、最悪のシナリオとしては協定の一部停止もありうる。ガザ停戦の見通しが立たない限り、EU・イスラエル連合協定をめぐる綱引きはこれからが本番といったところだ。