ホルムズ海峡で実弾が飛び交った夜、世界の原油の約20%が通過するその水道で、米艦とイラン軍が正面から撃ち合っていた。どちらが先に撃ったのか、いまも双方の主張は食い違ったまま。

バンダル・ハミル、シリク、ケシュム島――イランが主張する「米軍の先制攻撃」

イランの最高軍事司令部が発表した声明によると、米軍はホルムズ海峡に接近中のイラン油タンカーともう1隻の船舶を標的にし、バンダル・ハミル、シリク、ケシュム島の沿岸に「航空攻撃」を行ったとされる。イランはこれを停戦違反と断定し、即座に米海軍艦艇への反撃に移ったと主張している。

一方、米中央軍(CENTCOM)の見立ては真逆だった。

「イラン軍は、米海軍誘導ミサイル駆逐艦がホルムズ海峡を通過する際に、複数のミサイル、ドローン、小型船艇を発射した。挑発なき攻撃であり、米軍は自衛のためミサイル・ドローン発射拠点および指揮統制施設を攻撃した」(US Central Command)

CENTCOMはさらに「脅威を排除し、米軍を攻撃した施設を標的にした」と続けた。テヘランでも爆発音が確認されたとの現地報道があり、事態は首都にまで波及していたらしい。

「停戦は有効」と言うトランプ、でも「甘く見た」とも言った

交戦を受けてトランプが出したコメントは、ちょっと不思議な二重構造だった。「イランは我々を甘く見た」とにじませながら、同時に「停戦は依然として有効だ」と述べた。怒りと沈静化を一言に詰め込んだ形で、どちらが本音かは読みにくい。

この交戦が起きたのは、イランの外務省が「米国の和平提案を検討中」と表明した翌日のことだった。交渉ムードが漂い始めた矢先の衝突で、タイミングの悪さというより、誰かが意図的に火をつけたんじゃないかという見方も出てくるところ。

米イラン停戦という枠組みが今も名目上は生きているとされているが、双方が「相手が先に撃った」と言い張る状況で、その枠組みにどれほどの実効性があるのかは怪しい。

この先どうなる

今回のホルムズ海峡での交戦が「一夜限りの小競り合い」で終わるのか、停戦協議の崩壊につながるのかは、今後数日の動きで決まりそう。CENTCOMが攻撃したとされる「指揮統制施設」にどの程度の損傷があったか、イラン側が再報復に動くか、この2点が焦点になる。原油市場への影響はまだ限定的だが、海峡封鎖シナリオが現実味を帯びれば話は変わってくる。トランプが「停戦は有効」と言い続けられる時間は、思ったより短いかもしれない。