BlackRock BUIDLが5億ドルを集めてから2年も経たないうちに、ブラックロックはもう次の手を打ち始めていた。Bloombergが2026年5月8日に報じたところによると、同社はデジタル資産で現金を保有する機関投資家向けに、新たなトークン化マネーマーケットファンドを2本、立ち上げる準備を進めているらしい。運用資産残高10兆ドルを超える会社がこの領域に連続投資しているという事実は、ちょっと立ち止まって考えてみる価値がある。

BUIDLの次に来た「2本同時」という異例の布陣

2023年にイーサリアム上で立ち上げたBUIDLは、トークン化ファンドRWA(実物資産のトークン化)の文脈で業界の注目を集めた先行モデルだった。当初は「実験的な取り組み」という見方もあったが、数週間で5億ドルという資金流入は市場にインパクトを残した。今回は1本ではなく2本を同時に準備しているところが気になる。単なる拡張じゃなく、対象となる投資家層や資産の種類を意図的に分けようとしているんじゃないか、という印象を受けた。

狙い撃ちにされているのは、暗号資産などのデジタル形式で現金を保有する機関投資家だ。これまで彼らは、デジタル資産と伝統的な運用商品の間の「すきま」に現金をあいまいな状態で置いておくしかなかった。トークン化されたマネーマーケットファンドがあれば、そのすきまを埋めながら利回りも得られる。ニーズとしては筋が通っている。

「ブラックロックは、デジタル資産で現金を保有する投資家向けに設計された2本のマネー・マーケット・ファンドの立ち上げを計画している」(Bloomberg、2026年5月8日)

マネーマーケットファンドのブロックチェーン実装という観点では、決済の即時性、24時間取引、担保としての流用しやすさといった特性が機関投資家にとっての実用上のメリットになる。それを世界最大の運用会社が商品として提供するとなれば、話は「技術の話」じゃなくなってくる。

規制環境が変わったから、ブラックロックが動けた

タイミングも無視できない。米国では暗号資産や tokenized assets に対する規制の姿勢が2025年以降に変化しつつある。以前なら商品化に二の足を踏んでいたような設計が、今は法的なグレーゾーンを避けながらでも実現できる環境になってきた。ブラックロックほどのプレーヤーが動くということは、法務・コンプライアンス上の確認が一定程度ついた、と読むのが自然だろう。

トークン化ファンドRWAの市場全体で見ても、2024〜2025年にかけて残高は急拡大しており、ブラックロック以外にもフランクリン・テンプルトンやウィズダムツリーが参入している。ただ、残高規模・ブランド・販売網のどれを取っても、ブラックロックが本腰を入れるインパクトは別格と言っていい。

この先どうなる

2本のファンドが正式に立ち上がった後、注目すべきは「どのブロックチェーン上で展開するか」と「どの機関投資家が最初に買い手になるか」の2点だろう。BUIDLはイーサリアムベースだったが、今回は複数チェーンへの展開も考えられる。もう一つ、競合他社がどれだけ速く後追いするかも見ておきたい。ブラックロックが動いた後に様子見を続ける運用会社は、機関投資家の顧客から「なぜ御社にはないのか」と聞かれる立場に置かれる。その意味では、業界全体へのプレッシャーはすでに始まっているかもしれない。